ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

  『技法以前 べてるの家のつくりかた』
      向谷地生良  医学書院(シリーズ ケアをひらく)

帯には「私は何をしてこなかったか」とあります。
読み終えて「ほーーっ」と満足のため息をついた本は久しぶりでしたし、読み終えたとたんに二回目を読んだ本は全くいつ以来かしら・・・というほど胸のすく思いの本でした。

最初のほうで「履物をそろえると心もそろう、まず形から入れ、中味はあとからついて来る」という言葉は本当か?との導入があり、さらにこのように書かれています。

 (略)ーーーー援助者として外に表された所作は、同時に私たち援助者としての内側に還流し、次なる所作を発動する基礎となっていく。当然のように、その循環の中で大切なのは、【心をそろえてから履物をそろえるのではなく、まず履物をそろえる】、という振る舞いである。

 「形から入る」とは、そのような経験の蓄積から導きだされた実践知である。
     (中略)
  先に紹介した道元の言葉の後に「誰かが乱しておいたら黙ってそろえる」という言葉が続く。周囲のご機嫌とりだとか、よい子ぶっているという批判をおそれずに、黙々と履物をそろえ続けるという所作がゆっくりと人を動かす。

 それと同じように、臨床場面で吟味された「形」が、その背後にある思想や理念をゆっくりと実質化し、現実化するのである。     

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目次は次のようになっています。
1章  形から入れ
2章  専門家に何ができるか
3章  信じるということ
4章  「聴かない」ことの力
5章  人と問題を分ける
6章  病識より問題意識
7章  プライバシー 何が問題か
8章  質より量の“非”援助論
終章  「脳」から「農」へ
+α  「奇跡のリンゴ」の木村さんとの鼎談

私たちSTはセラピストと呼ばれる職種の常として、「何かをする人」「してあげる人」でなくてはならないという強迫観念にかられがちです。
「する」「してあげる」というのは専門家の驕り、勘違いで、実は相手の力を奪っているのではないか?
 「しない」ことの中に実は大切なことがあるのではないか?と問いかけられました。
「べてるの家」関連の本を読むときにいつも再確認させられる「ことばの力」「仲間の力」の大切さを思うと同時に、専門家としてどういう姿勢でいたらいいのか、たくさんの示唆が与えられました。

  「十勝ADHD&LD懇話会」をご存じでしょうか?創立は2000年2月。
 創立時の代表は“あの”田中康雄先生でした。
今は、小学校の養護教諭の吉藤さゆりさんが代表を努めています。
 この冊子は、好評だった1冊目の『ともだちだよね なかまだよね』に続き、「十勝ADHD&LD懇話会」十周年を記念して編集されたもので、懇話会ゆかりの人たちが文を寄せています。(ナカガワも一応端っこに・・・)

 代表の吉藤さんの文章の一部を抜粋してみます。

 〇「発達障害があろうとなかろうと、一個の人間として、尊厳を持って『子ども』 を語っているだろうか」
 〇「子どもに直接かかわるものが希望を失っては、こどもに希望を与えることなどできるわけがないことです。(中略) この希望は、疲弊すれば枯れそうになってしまい、又、孤軍奮闘ではいつか枯れてしまいます。支えてとなる大人こそ、希望を失ってはいけないのです。」
 〇「『Children first』 を心に刻むことを忘れずに、薄れてきているのなら、もう一度刻みなおせばよいのです。仲間と共に刻みなおし、一緒に歩んで生きたいと思うのです。
 〇「どの子も、どの人も大事な人たちです」

『ともだちだよね なかまだよね Part 2』 の申し込み方法
    送り先住所・氏名・連絡先・冊数を明記の上
    メールで  ⇒   konwakai@amail.plala.or.jp へ

       送料込みで一冊1000円。     同封の郵便振替用紙で払い込んでください。

 『気になる子も過ごしやすい園生活のヒント』(園の一日  場面別)
        執筆   あすなろ学園
        出版   学研
        価格   1600円+税

保育園の生活を一日の場面別に分けて、どんな行動をどう理解し、どういう手立てが考えられるかを、実に分かりやすく書いてあります。

 場面は登園・自由あそび・集団活動・排せつ・散歩・食事・着脱・午睡・降園 に分けられ、それぞれの場面の中でありがちな行動がとりあげられています。
 たとえば、「集団活動」の中の話題は次のとおりです。
 「次の場面への切り替えがスムーズにできない」「保育者の説明が分からず反応できない」「保育室や園から飛び出してしまう」「絵本や紙芝居の読み聞かせに参加できない」「造形活動に参加できない」「運動あそびに参加できない」「集団あそびに参加できない」「水あそびに参加できない」「ごっこあそびに参加できない」「しゃべってはいけない場面でもよくしゃべる」「当番活動に参加できない」

 多くの園でまさに先生方が困ってしまう場面が取り上げられているでしょう?

「気になる子」「発達障がいのある子(かもしれない、も含めて)」だけでなく、すべての子にとっての“過ごしやすい園生活”が作りだせそうです。

  「支援から共生への道  発達障害の臨床から日常の連携へ」 
         田中康雄    慶応義塾大学出版会
         1800円+税  2009年9月

   表紙カバーの裏にはこう紹介してあります。

     ↓
発達障害、不登校、虐待・・・・・
生きづらさを抱える人を前に「僕に何ができるだろう」と
自問自答する児童精神科医。
診察室を出て、自ら教室や福祉施設へ足を運び
そこで培われていく「連携」、そしてさらにめざす世界とは。
注目の医師が綴る、心の軌跡。

「教育と医学」という雑誌の二年間にわたる連載が一冊の本にまとめられたものです。 各章の題(一部省略)を見るだけでも、たくさんの示唆が得られると思います。

     治療する側から支援する側へ;
     誰のための連携なのか;
     虐待に対して何ができるのか;
     信じることから;
     その一瞬を待つ;
     困惑感そして関わることの覚悟;
     孤独を乗り越えた自立;
     就学相談での親の思いから;
     不登校の子どもたちから学ぶこと;
     聴き続けることから生まれる希望
     一緒にいる、ということ
     自立ってなんだろうーーー親からの学び
     聞いてほしい、と思うとき
     僕がいることを許される世界を探して
     診断名よりも大切なこと
     青い空の下で「僕」から「あなた」へ

  子どもの育ちをどう考えたらいいか、よく分からない時代になってきました。世間を覆う論調は「大切に見守る」「安全を保証するのは大人の役割」と言った方向に向かっています。でも、本当にそれでいいのでしょうか?   「生きる力」を育てると言いますが、「生きる力」って何?

    浜田先生たちのこの本は、子どもの育ちをめぐって、育ちを支える環境としての大人の腹のくくり方について、多くの考えるタネを提起しています。

        『赤ずきんと新しい狼のいる世界
      子どもの安全・保護と自立のはざまで
     〜〜「子ども学」構築のために〜〜』

     浜田寿美男+奈良女子大学子ども学プロジェクト
     洋泉社 発行  (2008年2月)
     1700円+税

  ご紹介したい文が多すぎるので、「ともかく読んで見てください」としかいえないのですが、一部分だけ紹介します。

≪親や教師は「子どもたちにどんな力を身につけさせればよいか」とか「どうすればこの子の力を伸ばせるか」と言った話をよくします。(中略) 
  人は何のために力を伸ばすのかと問うてみます。
  あえて答えるとすれば、力を伸ばすことで、その伸ばした力を使って、それまでできなかったこともできるようになるからです。それまでなかった新しい力が身につけば、その力を使ったあらたな世界が広がる。だからこそ力を伸ばすこと、力を身につけることが大事になるんですね。
 「力を伸ばす」ということ、「力を身につける」ことは「この身につけた力を使って生きる」ということとセットではじめて意味を持つということになります。では、私たちは「力を使って生きる」という後者の面をしっかり見ているでしょうか?「力を身につける」という前者の面ばかりに目を奪われて、それを使ってどう生きているか、というところにじゅうぶん目が届いてないのではないかという気がするのです。≫

  『日置真世の  おいしい地域(まち)づくりのためのレシピ50』 
        著者  日置真世       
        発行  全国コミュニティライフサポートセンター
        発売  筒井書房

    北海道の釧路には名物がたくさんあります。
「マザーグースの会」しかり、「えぷろんおばさん」しかり、「ネットワークサロン」「ゴキゲン子育て」「小児科医の堀口貞子さん」そして、そして・・・・・。
  この本の著者の日置さんも、もちろん、名物中の名物と言っていいと思います。

日置真世とは何か? ご本人の言によれば「所属は地域、肩書きは地域コーディネーター」。 今は、地域の底力について、大学で研究中です。 

  障害のある娘さんと一緒に暮らすことを通して、「地域」に深く切り込んでいった日置さんがたどり着いた境地は「課題を宝に変えて地域づくりをするのなら、地域経済が抱えている課題も福祉の発想を取り入れてやってみよう。それはけして、非現実的なことではなく、おもしろく重要な示唆を含んでいる方法だと思うのです」 

  「障害」を入り口として、結局それは「まちづくりの本質」とつながるものになって行きました。   私もささやかながら、「わが町」に根ざすとはどういうことか?考え、体を動かす中で、日置さんと全く同じように考えるようになったので、とても共感しました。

  「地域に軸足を置くと、元気で、楽観的になれるよ!!」と、私も言いたいです。

 昨今は、「発達障害」関連の本があふれかえっていますが、杉山先生の本は、それらの中でも先頭を走る本だと思います。  時間がないので、詳しく感動をお伝えすることはできませんが、今回の「講座 子どもの心療科」もすごかったです。

 地域で「ことば」を入り口とする「相談」という看板を出してお店を広げていると、実にいろんなお子さんにお会いします。いわゆる「発達障害」や「発達障害(疑い)」ではとうていくくることのできないいろんなお子さんと親ごさんたち・・・・・。

  (ちなみに、私は個人的には「発達障害の疑い」ということばが大嫌いです。「かもしれない」「案ずる」「心配」という意味を表わすだけでいいのに、なぜ「疑い」と悪者扱いされなくてはならないのでしょうか・・・)

   この本は、地域で「支援」にあたる、すべての方に読んで、知っていただきたいと思います。

 内容の一部紹介

◆心療科で出会う発達障害   

発達障害の理解と対応;    
発達障害の診断と鑑別; 
発達障害の治療とフォローアップ;   
広汎性発達障害の子どもと関係を築くコツ;     
発達障害の薬物療法;   
発達障害児の示す問題行動の理解と対応;      

◆ 心療科で出会う情緒障害   
小児心身症への対応;摂食障害の理解と対応;    
摂食障害の心理治療;子ども虐待への対応;    
性的虐待を受けた子どもへの対応と支援;    
不登校をめぐって;不登校への対応;

◆心療科をめぐって   
心療科の入院治療;    
心療科に関連した福祉制度

 「発達障害 子どもを診る医師に知っておいてほしいこと   
       日常診療、乳幼児健診から対応まで」
               平岩幹男 金原出版   2800円+税

 「乳幼児健診ハンドブック」をご紹介した平岩幹男先生の新刊です。
  医師向けに書かれていますが、実は、「子どもにかかわるすべての人」に読んでほしい本です。

  診断の基準、発達障害とは?といった、決まりのお話ももちろんありますが(しかも、とても分かりやすく書かれていて、大助かりです!!) 一時発達障害の可能性があったけれどめきめき伸びた子がいた、とか、豊富な臨床経験と、実際に地域で子どもの成長を長く見守って来た医師ならでてはのエピソードがたくさんちりばめられています。

はじめに  子どもを診る医師にお願いしたいこと
第一章   発達障害とは
第二章   目指すゴール
第三章   幼児期の自閉症をめぐって
第四章   高機能自閉症をめぐって
第五章   ADHDをめぐって
第六章   学習障害
第七章   発達障害のかかえる問題は年齢により異なる
第八章   乳幼児健診をめぐって
第九章   発達障害をめぐってしばしば用いられる用語について
第十章   外来でできること

  値段が高いのが難点ですが、読んでいて溜飲が下がる思いでした。私の中では星5つ!!の本です。   (私は平岩先生から献本していただいたのです・・・・・ 役得ですね)

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p>   「これでわかる」だの「すべてがわかる」だのという名前の本には疑り深くなっているナカガワですが、この本は、北海道大学の田中康雄先生と、作業療法士の木村順さんの共同監修なので、期待できるゾ!と購入しました。2008年11月の発売です。 

そして、案の定、「いい本」でした。つまり、「これで、子どもたちの置かれた状況をわかってあげやすくなる!」という意味で。

  感覚統合という見方は、子どもの不可解な行動を理解するための入り口として、とても、重宝なものだと日ごろ思っています。「なぜ?」から「そうだったのか!」へ、です。
  ただ、育て方や、かかわりの方法として、感覚統合療法や、感覚統合訓練がどこまでも万能というわけではありませんよね。この本は、そのあたりのことも、きちんと押さえた上で、書かれています。育てにくい子をもって苦戦する親ごさんたちの子育てを助けるためのヒントに満ちた本、という感じです。
    さし絵と、図解も、実によく考えられた、情報量の多いものになっていて、理解を助けてくれます。

  「はじめに」には、こうあります。

 ≪こういった子どもたちが、誤解なく受け止めてもらい、理解の元に育てられうことを通して、「ボク、生まれてきて良かった!」「自分のことが好き!」と実感できる子どもたちがひとりでも多く増えてくれることを願ってやみません。そして、本書が、そんな子育てができるための一冊としてお役に立てれば幸いです。(木村)≫

 支援者の側にいる人も、当事者である親ごさんにもオススメします。

 「育てたいね、こんな学力     和光学園の一貫教育」
        大瀧三雄・行田稔彦・両角憲二 
        大月書店 2009年7月  1680円(税込み)
http://www.otsukishoten.co.jp/cgi-bin/otsukishotenhon/siteup.cgi?&category=1&page=0&view=&detail=on&no=460

  書評で見て思わず購入。電車の往復で一気に読み終え、文字通り溜飲の下がる思いがしました。
  「学力テスト」の結果、学力が低下したとなると、それ!学力向上、それ!学力テスト、それ授業時間を増やせ! と、世をあげてあたふたと浮き足だっているのは、何かおかしいと常々思っています。「学力」って、テストの点のことじゃないでしょうに。
  「学び」は、本来ワクワクする営みのはずなのに・・・。

  この本の中の一節に、こう書かれています。
  【和光では 『教師との一問一答式の授業』ではなく、『子ども同士の討論で答えを見つける授業』がよいと考えてきました。それを『問いと答えのあいだの長い授業』と言ってきました。
 つまり、(中略)子どもの疑問や気づきなど、一人ひとりの考えを大切にして、みんなで考えあう(中略)ということです】

  最後のまとめで教育学者の梅原利夫氏が学力の全体像についての考えをこう書いています。

①学びを求める力ーーーー学びへの要求ーーーーーー学びに向かう土台として
②学んでいく力ーーーーー 学びの持続的な行為ーーーわかる・できる・使える
③学び合う力ーーーーーーー学びのコミュニケーションー共同の学習
④学び取った力ーーーーーー学んで獲得・定着した力ーー学習の結果、身につく
⑤次の学びにつなげる力ーー学びの応用ーーーーーーー組み合わせて使いこなせる

  知識を得ることが生活を豊かにし、生活の中での疑問を解決するために学習や知識が必要になり自然に身につく・・・。
  そういう「当たり前」が、教育の中に実現するといいのに、と感じました。
 障害のある子どもにおいても、です。

 『三木安正著作集 全7巻』
       学術出版会   全巻で 90300円

 http://www.gaku-jutsu.co.jp/pages/user/search/?keyword=%8EO%96%D8%88%C0%90%B3&blog_id=344787

 私が「親分」とあおぐ、故・三木安正先生の全集です。
 三木先生は日本の幼児教育、知的障害児の教育の基礎をきずいた大きな人の一人です。
 復刻版なので、読みにくいところもあり、また、値段も高い(!!!)のですが、財布をはたいてさっそく買い込み、本棚の一番大切な本を置く場所におさめました。

  「精神薄弱教育の研究」(昭和44年、日本文化科学社 現在は絶版)も、二分冊になって収められています。上記の本は、広辞苑くらいの厚さがあるので、先生はつねづね「昼寝枕」と呼んでいました。「こんなに厚い本を読むヤツはいないよ!」って。

  脳科学とやらが進歩し、発達障害ばやりの今日このごろですし、その恩恵は決して否定すべきものだとは思いませんが、障害のある子どもたちに対してほとんど何の手立てもなかったころ、「この子らの育ちにとって、どういうかかわりが望ましいのか」を実証的に考え続けた先生の足跡は、とても大きいと思います。また、今こそ、理念問題に立ち返りながら目の前の問題を考えて行かなければ、特別支援教育が上すべりのものになってしまいそうで、ちょっと気がかりです。

『ディスレクシアでも大丈夫
  読み書きの困難とステキな可能性』
            藤堂栄子 ぶどう社

 http://www.budousha.co.jp/booklist/book/dhisure.htm

ディスレクシアとは「読み書き障害」のことです。知的な障害があるわけではないのになかなか文字を覚えない、書けるようにならない、ひどく字が汚い、本を読むときに読み間違いが多い、行の読みとばし、テニオハの間違い・・・・など、「あれ?」と思われる子の中にはこのディスレクシアの子が混じっている可能性があります。
    ディスレクシアは、言語聴覚士にとっては、あまり珍しいことではありません。ディスレクシアは失語症の周辺ではよく見られ、脳のどこかにうまく行かないところがあると、おきる状態だからです。

 それにしても・・・・・・ディスレクシアとわかったら「おめでとう! いろいろな支援が受けられるよ」と言ってもらえるイギリスと、いじめや叱責の対象になってしまう日本と、症状の現れ方は同じでも、扱われ方の違いには、ほんとに、悲しくなってしまいます。

 あと5年、10年たったら、日本も。藤堂さんの息子さんがイギリスで言われたように「君はディスレクシアだから、そんなにステキなんだね!」と言ってもらえるようになっているといいな、と思いつつ。

 『発達障害  境界に立つ若者たち』
       山下成司 平凡社新書  740円+税

 2009年6月15日発売の新書です。

「はじめに」から   「障害とは親も本人も認めたくはない。でも学校の授業はちんぷんかんぷん・・・・。勉強が嫌いだから、怠けているからできないのだと、周囲からも言われ続けることで、本人は自信を失い、つらい思いをすることになります・・・・・(中略)  健常者と障害者のボーダーにいるような、いわゆる「はざまの子=境界児」と呼ばれる子どもたちです」

  著者は、こういう「はざまの子」を受け入れるA学院という小さな学校に、ひょんなことから美術の講師として採用され、生徒たちと18年間かかわり、教員にありがちな“上から目線”ではなく、生徒といっしょに考え悩みながら過ごしました。
  この本は、著者がかかわったA学院のことと、かかわった生徒たちがインタビューに答えて話してくれた今までのこと、から成り立っています。

 高校生、社会人になった「はざまの子どもたち」に接したことのない方には、ぜひとも読んでいただきたい本です。
  早い時期から、その子の特性に合わせた支援を受けて育つことがなぜ、大切なのか、また、たとえ、高校生年齢になってからでも、ちゃんと理解し受けとめてくれる人に出会えれば、そこからでもやり直しができることもある・・・・など、いろいろなことが学べると思います。

「乳幼児健診ハンドブック  その実際から事後フォローまで」       平岩幹男 診断と治療社 

  小児神経のドクターとして実際の診療にもあたり、また、戸田市保健センター長として行政職も経験された平岩先生の本です。
  次の世代をになう赤ちゃんや子どもたちが健やかに育つために、大人たちがすべきことの具体的な表現の一つが乳幼児健診なのだと思います。
   必要なことをきちんと行いながら、保護者の気持ちを支えてゆくとはどういうことか、健診にかかわる人が読んでおくべき本だと思います。

  目次は以下のとおりです。

乳幼児健診の設計;
1か月ころの健診;
4か月ころの健診;

10か月〜1歳ころの健診;
1歳6か月ころの健診;
3歳児健診;
5歳ころの健診;

乳幼児健診の事後フォローと周辺事業、予防接種;
健診における母親の問題―抑うつそして接近感情と回避感情;
扱いにくい子どもたち…発達障害をめぐって;
児童虐待をめぐる問題;
障害や疾患の受容と対応

   『キスなんてだいきらい』
    トミー・ウンゲラー  矢川澄子訳  文化出版局

 息子たちと一緒に読んだ懐かしい本の一冊。時々、無性に読みたくなります。
主人公は猫のパイパー・ポー。
次から次から「全くもう!」と言いたくなるようなことをしでかすいたずらっ子です。
ボーかあさんは、そんな坊やがかわいくてかわいくて仕方ありません。
  「はやくきて おすわり ぼうや。
   この つぶしねずみをおあがり ぼうや
   ほら、ニシンのほねも ヒワのフライもあってよ、ぼうや
   あんたの ために つくったのよ ぼうや」

 「つぶしねずみ」とか「ヒワのフライ」って、どんな味なのかしら?
食べてみたくはないけど、猫さんたちの味覚には合うのでしょうね。 

  パイパー・ポーは、“ママちゃん”の、そういうべたべたしたかわいがり方から卒業したいのです。次々、いたずら、ケンカ 、ケガを起こします。
  「そういうこと、ある、ある!」っていうシーンがいろいろありまして。
 久しぶりに読み返してクスクス笑いました。

『大人のアスペルガー症候群』 
   佐々木正美、 梅永雄二 監修
   講談社 こころライブラリーブックス
   200年8月   1300円+税

  読もう読もうと思っていながら、手に入れるのが遅くなりました。   佐々木正美先生と、梅永雄二先生の監修で、講談社の「こころライブラリーブックス」のシリーズなのですから、もちろん、ナットクの一冊です。内容は

 第1章  なぜうまく生きられないのか
 第2章  人にあわせられない疎外感
 第3章  職場に定着できない無力感
 第4章  誤解と非難がもたらす劣等感
 第5章  支援を受けると生活が安定する   です。


  私は典型的なアスペルガー症候群ではないけど、かなり近いところにいる、と自己分析しているのですが「少数の友だちとだけ仲がよかった子ども時代」とか「興味のないイベントは楽しめない」とか、「一人遊びが好きでマイペース」などの特徴は、「それ、私のこと!」とばかりにバリバリ当てはまっています。
   私は幸い、周囲に恵まれ、また、自分で自分の特性をわきまえているつもりなので、今のところ、特段の不便はありませんが、(私はよくても、家族たちは、大迷惑しているらしい・・・・・ですが)まわりに「あれ?もしかしたら、アスペルガーでは?」と思う人がいたら、また、自分のことを「なぜ、こんなに生きるのが大変なんだろう?」って思う人には一読をオススメします。

 「べてるの家」は、北海道・浦河を拠点として活動する、精神障害のある人たちの集まりです。そのユニークな発想と果敢な「商売」で、全国にたくさんの支持者、いや、信奉者を生み出しています。信奉者のことを「べてらー」と呼ぶそうです。私もべてらーの一人です。
 べてるの家情報サイト「べてるねっと」もあります。

「べてるの家」に関してはいろいろな本が出ています。

「べてるの家の非援助論ーーそのままでいいと思えるための25章」
「べてるの家の当事者研究」          (以上  医学書院) 
「降りていく生き方ーーべてるの家が歩むもう一つの道」
                      (横川和夫 太郎次郎社)
「悩む力ーーべてるの家の人々」 (斉藤道雄  みすず書房)など。

また「寄る辺なき時代の希望ーー人は死ぬのになぜ生きるのか」   (田口ランディ   春秋社)の中の一章にも取り上げられています。

それらの本のいずれも魅力的でしたが、今回の「ゆるゆるスローなべてるの家」はそれらに輪をかけて、来るべき時代の価値観とでも言うべきものに、しっかり踏み込んだ読み応えのある本です。
読み終わってすぐに2回目を読む、なんて、本当に久しぶりでした。

「苦労を奪わない」
「弱さを絆に」      「弱さによって人とつながる」
「足りないことが大事」
「病気で幸せ。治りませんように」
「失敗が失敗のままで収穫をもたらし、弱みが弱みのままで強みとなる可能性を帯びた場所」

などなど、忘れがたいことばがあちこちに見つかります。

 「なぜ?」「どうして?」と、答えのない問いを自分に突きつけ、苦しくなってばかりの人もいるでしょう。若いころ、私もそうでした。
この本はそんな方に、一つのヒントを与えてくれると思います。
答えは「みんなで」の中にある、というヒントを。

   「言語聴覚士のための言語発達障害学」 
       大石敬子・石田宏代編集
       医歯薬出版株式会社 2008年3月刊

   言語聴覚士養成校の学生を念頭においた教科書シリーズの中の一冊です。4400円+税と値は張りますが、言語発達障害を概観するには適した本です。

   周辺分野の方たちが、ST(言語聴覚士)って、子どもをどういうふうにとらえるの? ことばの発達をどう考えるの?ということを知りたい時の助けになるでしょう。

  1 言語発達障害とは
  2 正常言語発達
   3  発達障害学
   4  評価
  5 支援
 に分かれており、「5  支援」に多くの紙数がさかれているのも、セラピストならではの視点だと言えるでしょう。
不肖ナカガワも「5 支援」の章の中で「家族支援」の部分を分担執筆しています。

本全体の印象は、もちろん専門書ではありますが、発達障害系の本を読みなれている保護者の方には、決して難解ではないと思います。

『教室でできる特別支援教育のアイデア172 小学校編』    月森久江編集 図書文化   2005年11月発行

  現場にいる先生たちが実際に行っている例が満載されています。
  読者レビューの中には、保護者が担任の先生と回し読みをして、できることを取り入れてもらったとの書き込みもあります。
  特別支援教育とは、「特別な子」への「特別な支援」ではなく、「何らかのニーズを持つ子」への「個別配慮」、つまりは「当たり前の、一人一人を大切にする教育」なのだということがよく分かる本です。

  なお、目次は次の通りです(「スペース96」サイトより)

パート2 も出ています。

    『教室でできる特別支援教育のアイデア 小学校編 パート2』目次

『特別支援教育コーディネーターの手引き〜特別な支援が必要な子どもたちへ④』(佐藤曉  東洋館出版社  2008年9月発行)

「この本は、何をしたらいいのかどうも分からない、と言われがちなコーディネーターのお仕事内容を、コンパクトにまとめた実用書です。保護者の方も、ぜひ学校の先生と一緒に読んでみてください。」(著者より)と書かれているとおり、本当に具体的で分かりやすく、先生方のテキストとしてばかりでなく、我われのような学校外で支援する立場の人間にも非常に有益な内容になっています。

  ↑

 この紹介文は、釧路の堀口クリニックの堀口貞子さんのHPからの受け売りです。 佐藤曉先生の本なら、ゼッタイはずれはないのと、目次を見たら、まさに今必要なことが網羅されていると思ったので早速注文しました。
「スペース96」のサイトに目次の紹介が出ています。

目次:

第1章 発達障害のある子どもを知る
障害と「困り感」
「困り感」は環境とのあいだで生じる(1)時間環境
「困り感」は環境とのあいだで生じる(2)空間環境 ほか


第2章 担任へのアドバイスをするために
特別支援教育の枠組み
個別的支援のセオリー(1)学校の仕組みを教える
個別的支援のセオリー(2)生活のシナリオをつくる ほか


第3章 保護者を交えたケース会
「保護者を交えたケース会」を企画しよう
「支援の基地」としての「保護者を交えたケース会」
「保護者を交えたケース会」実施の手続き ほか

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「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。

疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

お気軽にお問合せください