子どもの育ちをどう考えたらいいか、よく分からない時代になってきました。世間を覆う論調は「大切に見守る」「安全を保証するのは大人の役割」と言った方向に向かっています。でも、本当にそれでいいのでしょうか? 「生きる力」を育てると言いますが、「生きる力」って何?
浜田先生たちのこの本は、子どもの育ちをめぐって、育ちを支える環境としての大人の腹のくくり方について、多くの考えるタネを提起しています。
『赤ずきんと新しい狼のいる世界
子どもの安全・保護と自立のはざまで
〜〜「子ども学」構築のために〜〜』
浜田寿美男+奈良女子大学子ども学プロジェクト
洋泉社 発行 (2008年2月)
1700円+税
ご紹介したい文が多すぎるので、「ともかく読んで見てください」としかいえないのですが、一部分だけ紹介します。
≪親や教師は「子どもたちにどんな力を身につけさせればよいか」とか「どうすればこの子の力を伸ばせるか」と言った話をよくします。(中略)
人は何のために力を伸ばすのかと問うてみます。
あえて答えるとすれば、力を伸ばすことで、その伸ばした力を使って、それまでできなかったこともできるようになるからです。それまでなかった新しい力が身につけば、その力を使ったあらたな世界が広がる。だからこそ力を伸ばすこと、力を身につけることが大事になるんですね。
「力を伸ばす」ということ、「力を身につける」ことは「この身につけた力を使って生きる」ということとセットではじめて意味を持つということになります。では、私たちは「力を使って生きる」という後者の面をしっかり見ているでしょうか?「力を身につける」という前者の面ばかりに目を奪われて、それを使ってどう生きているか、というところにじゅうぶん目が届いてないのではないかという気がするのです。≫