今日(3月8日 日曜日)は、「第6回 関東子ども精神保健学会」の、子ども虐待をめぐるシンポジウムに参加してきました。充実の内容でした。
学会長でもある、淑徳大学の松田博雄先生がお書きになった「子ども虐待 多職種専門家チームによる取り組み」の本の紹介を「本の紹介」欄に載せておきました。
杉山登志郎先生が「子ども虐待という第四の発達障害」(学研)で提起されたように、虐待環境が引き起こす行動特徴と、発達障害の行動特徴とは酷似しています。
また、発達障害のある子ども、あるいは、その可能性のある子どもは、総じて養育者にとっての「育てにくさ」、先生にとっての「扱いにくさ」を持ち合わせており、親や先生からの不適切な扱いを引き出しやすいという事実もあります。
発達障害にかかわる支援者、専門家と名乗る人たちはすべからく、虐待について知っておかなければならない、と、再確認すると同時に、子どもの健やかな育ちを守るために、周囲にいる大人たちがネットワークを組み、「みんなで親子を支える」ことの大切さも、あらためて感じました。
おりしも、日本における虐待予防の活動に先駆的に取り組み、「社会福祉法人 子どもの虐待防止センター」の理事長であった坂井聖二先生が、3月2日に59歳の若さで亡くなりました。小児科医として、子どもの命と権利を守るために先頭に立って奮闘された坂井先生の「こころざし」を、幾分かでも、私たちは受け継いでいかなければならない、と思います。
ちなみに、日本語の「虐待」は、もっぱら子どもに手を上げるという、身体的な虐待をイメージさせますが、英語のchild abuse あるいは、 mal treatment はもっと広いニュアンスを持っています。たとえばdrug abuseは薬物依存、薬物濫用のことですし、mal treatmentは、「mal=よくない treatment=扱い」、すなわち、不適切な扱い、不適切な養育という意味合いです。
子どもの意志に関係なくお受験に駆り立てたり、一週間びっちりおけいこごとでスケジュールを埋めたりするのも、立派な「mal treatment」なのではないか、と、疲れ切った表情の子どもたちを見ていて、思います。