ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。


  松田博雄先生は小児神経のお医者さんです。私は、調布市の健診後フォローのチームの一員に、松田先生がいてくださることの恩恵をたくさんこうむってきました。

 先生は、子どもの虐待防止に精力的に取り組み、三鷹市のネットワーク構築に大きな貢献をされただけでなく、虐待防止のために医療にできること、医療がしなくてはならないこと、をさまざまな場で訴え続けておられます。

  発達障害のある子ども、発達障害かもしれない子の多くは「育てにくい子」であり、保護者や周囲の大人からの虐待(不適切な扱い)を誘発しがちです。
  逆に、虐待(不適切な養育)を受けてきた子どもは、発達障害と同様の行動、症状を見せるようになることが少なくありません。「虐待という第四の発達障害」(杉山登志郎先生による)といわれるゆえんです。
  発達障害にかかわる支援者、専門職は、虐待についてよく理解しておく必要があります。保護者支援のためにも、です。

  松田先生の本が2008年3月に出版されました。

「子ども虐待  多職種専門家チームによる取り組み」(松田博雄  学文社)

  虐待から子どもとその親を助け出す第一線で仕事をしてきた方ならではの本で、現場の支援者が知っておくべき知識の、ほとんどが網羅されていると思います。
  税込み4200円と値段は張りますが、目次を辞書的に使って、必要なところだけを読む、という使い方ができて便利です。

   目次を次に貼り付けておきます。
  

はじめに

第1章 虐待とはなにか
 1 子ども虐待
 2 児童虐待防止等に関する法律による定義
 3 古くて新しいこと
 4 ファミリーバイオレンス
 5 子ども虐待は小児の重大な疾患である
 6 不適切なことば「虐待」
 7 子どもの立場で
 8 子ども虐待は,子どもの権利侵害である
 9 親子心中・無理心中・一家心中
 10 子育て困難の最重症型が子ども虐待である
 11 愛着形成が障害されること
 12 たかが50年,されど20年
 13 虐待をする,特別な人がいるわけではない
 14 虐待をする,特別な人がいる
 15 ドメスティックバイオレンス(DV)の現場にいること,見ること
 16 「虐待」と認識することで,さまざまな支援につなげることができる
 17 虐待する親を罰するのではない,虐待する親も支援を必要としている
 18 構造的虐待・専門職による虐待
 19 日本の文化に根ざした対策の構築を

第2章 子ども虐待は放置してはいけない・子ども虐待の予後は悪い
 1 脳の発達と発達の臨界期
 2 子どもの命に関わることがある
 3 幼児期・愛着障害と第四の発達障害
 4 学童期・さまざまな問題行動と非行
 5 思春期,青年期
 6 世代間伝播
 7 虐待体験は,脳に不可逆的な病変を残す
 8 すくすくコホート研究

第3章 一般的な処遇・対応
 1 医療モデルと情報の取得
 2 発 見
 3 通 告
 4 処遇の検討・決定
 5 安全の確保
 6 在宅指導―再統合と地域での追跡と見守り
 7 予 防

第4章 子ども虐待の4類型と見極めのポイント
 1 身体的虐待
 2 性的虐待
 3 ネグレクト
 4 心理的・情緒的虐待
 5 傷の見方
 6 性的虐待の診察法

第5章 虐待の類型
 1 揺さぶられ症候群(SBS)
 2 代理によるミュンハウゼン症候群(MSBP)
 3 医療ネグレクト
 4 事故によらない薬物中毒
 5 非器質性発育障害(NOFTT)
 6 障害児と虐待
 7 ドメスティックバイオレンス(DV)と子ども虐待

第6章 周産期と子ども虐待
 1 極低出生体重児は発達障害,被虐待のハイリスク児である
 2 胎児への虐待
 3 胎児と環境
 4 新生児遺棄・新生児殺
 5 人工妊娠中絶
 6 生殖医療・不妊治療と虐待

第7章 医療機関と子ども虐待
 1 医療機関で子ども虐待に取り組む理由
 2 子ども虐待に病院職員は取り組まなければならない
   ―杏林大学病院の理念を基に―
 3 地域の中核病院の子ども虐待対応チーム
 4 クリニック・市中病院での対応
 5 医師・医療機関が虐待対応に躊躇する理由
 6 医療機関の中のソーシャルワーカー(MSW)の役割
 7 診断するということ
 8 意見書・診断書の書き方
 9 病院連携・病診連携
 10 緊急時への対応
 11 子ども虐待と医療費

第8章 亡くなった子どもから学ぶ・剖検とdeath review
 1 心肺停止状態で搬送され,死亡した事例
 2 死亡例に対する対応
 3 厚生労働省の死亡例検討
 4 剖検制度・監察医制度がある地域はごく一部
 5 臨床法医学
 6 子どもの死亡例の検討
 7 臓器移植と子ども虐待

第9章 予防に勝るものはない
 1 虐待発症のメカニズムと虐待の予防
 2 保健機関の役割・スクリーニング
 3 さまざまな育児支援策
 4 さまざまな保健施策,子育て支援策
 5 妊娠期からの虐待ハイリスク家族への支援
 6 妊娠・出産が変わってきている
 7 母乳が見直されてきている
 8 新生児訪問とこんにちは赤ちゃん事業
 9 ノーバディーズパーフェクト
 10 デベロップメンタルケア
 11 エジンバラ産後うつ病質問票
 12 乳幼児健診
 13 中高生のふれあい体験
 14 性教育と虐待
 15 チャイルドライン
 16 電話相談
 17 オレンジリボンと児童虐待防止推進月間
 18 子育ち支援
 19 safe community(WHO)

第10章 要保護児童対策地域協議会と地域ネットワーク
 1 要保護対策地域協議会
 2 ネットワーク構築には歴史がある・東京三鷹市の紹介
 3 ネットワークの適切な機能
 4 それぞれの機関・組織内の連携
 5 「見守り」という曖昧なことば

第11章 構造的虐待・支援者が気をつけること
 1 専門職による虐待
 2 援助者の精神保健,元気でなければ対応はできない
 3 一緒にやりましょう

以上です。

なお、とてもコンパクトに知りたい方には、「月刊 地域保健」2008年11月号特集「発達障害 up  to  date」の記事の中にも、松田先生の文が載せられていました。

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疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
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