ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

 半年ほど自宅療養していた長男が、塾のセンセイに復帰しました。
一時は、一生寝たきりか、と覚悟するほどの状態だったので、このような日が来たことを奇跡かと思うほどです。感謝にたえません。
本人も、「書いていいよ」というので、心配かけた方々の目に留まって、安心していただければと思って、てんまつを書きます。

忘れもしない2013年9月14日。息子から電話がありました。
狛江市内にある勤め先(個人塾)からです。
「腰が痛くて動けなくなったから救援要請!」。
すぐに車で迎えに行きました。
階段なんて、降りられるはずもない状態でしたが、精神力(?)で降りて、家についたとたんに寝付いて、文字通り、身動きできなくなってしまいました。

と、ここまで聞けばたいていの人は「ああ、ぎっくり腰ね。私もやったことある。あれは痛いよね〜」とおっしゃると思います。
当然、私もそうだと思いました。
とりあえず、救急当番の病院に電話したところ「ぎっくり腰の場合は、来ていただいても、大した治療はできません。お家で痛みが治まるまで寝ているのが一番です!」といわれましたので、ようすを見ていました。

が、痛み方がただごとではなく、どうやら、神経や筋肉にも異常が来ているような症状の数々。
もしも、興味のある方は「脊髄炎」の闘病記などを読んでいただくと、どんな症状だったのかが分かりますが、それこそ「ひと言では言えない」状況が続きました。
ちょっと触れるだけでも全身に電流が走るような痛みでエビ反りになって体が飛び上がってしまうので、病院に運ぶなんて、とんでもない。
もともと痛みにはがまん強い息子なのに、「ぎゃーっ!」と叫ぶほどの痛み。
軽いタオルケットも重くてたえられず、フリース素材の軽いケットだけが体に乗せられました。
痛みで、夜も昼もほとんど寝られません。時々、うとうとする程度。

食べることだけは、続けられました。それこそ、親鳥がヒナにエサを与える…状態で、一口ずつ口に運びます。とろみのあるシチューなどは、食べにくくて却下。むせたりしたら大変!!!!

飲むのはストローか吸い飲みで。頭を横に向けることもできないので、熱帯魚に空気を送り込むチューブを買ってきてストロー代わりにしました。曲がりやすいので、長めに切って、口に差し込めば、飲めるのです
こんな所に、仕事上、手に入れたさまざまなノウハウが役に立ちました。

あたためたり、冷やしたり、ともかく、本人が少しでも痛みが少なく、気持ちよく過ごせるように、と、我ながら、よく工夫して介護したな、と思います (^_-)-☆

また、ネットで探して、訪問して下さるという、鍼灸整体の先生を捜し当て、寝付いた2日後から毎日のように来ていただきました。
お若いのに、腕は確かで、これまた、とてもよい勉強になりました。
お父様も、鍼灸整体の先生をしておられるとか。知識や守備範囲の広さ、深さがただものではない!感じです。

治療院を構えてはおらず、出張専門とのこと。
出張範囲は、おおむね都内とのこと。
依頼が集中して、うちに来てくださらなくなると困るのですが、特別にお教えします!

三華堂整体出張治療院
鍼灸治療と整体をなさいます。

さて、最初の何日間か、息子は「左足、ある?」と聞いたり、「体の位置がどういうふうに向いているのか把握できない…」と言ったり、「起き上がる、ってイメージが全くつかめない」などといいました。
腰も足も、筋肉が明らかに萎縮してタプタプになってしまっていたので、これは、単なるギックリ腰ではゼッタイないぞ、神経筋萎縮系の何かの可能性が高い、と覚悟しました。私は病院づとめをしたこともあるので、神経筋萎縮系の患者さんたちのことを知っていましたから。
ただ、マヒではなく、触られる感覚はしっかり保たれていましたし、動かすことができていたのが、一縷の望みでしたが。

体の位置感覚や、足の動かし方が分からない状態についてはニキ・リンコさんたちの本「自閉っ子、こういうふうにできてます」(花風社)に「コタツに入ると足がなくなる」というエピソードが有名ですが、私や息子の周辺でお会いする発達系のお子さんたちは、同様のエピソードを山と抱えています。
私はそういうことがありうるだろうな〜と想像して理解するのですが、息子は今回、体験して深く理解し、共感できるようになったそうです。
それにしても、叫ぶほどの痛みと眠れなさのさなかに、「体の位置情報がつかめないってこういう感覚なのかぁ」などと考えたり、話したりするのは、かなりヘンな親子ではあります。

鍼治療も回を重ねて、少しずつよくなる方向が見えてきたので、東洋医学系の方法に賭けようと思ったものの、昼夜続く全介助の生活で、私も体力の限界になりそうでした。
そこで、3週間たったところで、「死ぬ気で」介護タクシーをお願いし、4人がかりでタンカに乗せてストレッチャーに移し、(取り落としそうになりながら)病院にかつぎこみました。

病院の先生は「どうしてこんなになるまでほっておいたの!!?」とお怒りでした。
ほっておいたわけではなかったんです。病院に連れて行ったときは、最初の状態よりずっとよくなっていたのですが………
そして、やっとのことで入院させてもらいました。

なぜ、こんなになるまで病院に来なかった!!とセンセイには叱られましたが、でも、もし、すぐに病院に入ったとしても、確たる治療の方法があったとは思えないし、鍼治療を一回受けるたびに、明らかな変化が生まれるのを実感していたので、今でも、あれは最善の選択だったと思っています。

受診する前に、「入院後も、鍼の治療を病室で続けさせてもらえないか」と交渉したのですが、一言のもとに却下でした。残念。
西洋、東洋の医療を両方実施してくれる統合医療の病院がもっともっと増えれば、医療費の削減にもつながると思うんだけどな………
病院で、鍼、お灸、漢方、整体、ヨガ、などなどが併せて受けられたらいいと思いませんか?

さて、入院した病院は、近くのアットホームな小規模の病院で、入院中にも、思い出すと笑えて来る、いろんな楽しいエピソードの数々。

息子は、以前からそうでしたが、痛みやつらいことがたくさんあっても、面白いことや楽しいことを見つけ出すことにかけては天才といえる能力を持っています。そのことも、再確認しました。

レントゲン、MRI,血液検査、髄液検査やら、いろいろやっていただき、原因は不明。
でも、やがてリハビリも始まり、これまた、親身になってくださるPTさんたちに恵まれ、動きは改善しましたし、ST以外のセラピストの患者への向き合い方は、これまた、いろいろ勉強になりました。

1ヶ月ほど入院して、11月半ばに、杖をついて、ヨロヨロとなら歩けるようになり、退院したのですが、そこからなぜだか、また、全然歩けない寝たきり状態に逆戻りし、それでも、また、徐々に回復して立ち上がれるようになり、杖なしで足が一歩前に出るようになったり、前にかがめるようになったり、しゃがめるようになったり、それこそ、フツウの人たちにとっては、何でもない一つずつの動作が、「できるようになった!」という喜びを生んでいます。

介護ベッドを借りて、1階に設置。もう二度と2階には昇れないかと思いましたが、今はスタスタとは行きませんが、一日に何回でも上がったり降りたりできるようになりました。

思えば、彼が大学生のころ、乳幼児期から持っていたアトピーが成人期劇症型アトピーに進行しました。これ以上、病院で言われる治療を続けても、先は見えない。よし、クスリから離脱しよう!と親子で決心し、それこそ、「ワラにもすがる思い」で水、食べ物、漢方、気、整体など、あれこれにトライしました。
人間にこんなことが起きるのか!と 人に言っても、経験した人ではないと信じてくれないような激しい経過をたどりました。
やめずにすんだのは、ネット上の、体験者たちの記録でした。
あまりの症状のひどさに、途中で投げ出して病院に頼ったとしても、それこそ、「どうして こんなになるまでほっておいたんだぁぁぁぁぁ」とクスリ漬けに逆戻りするのは目に見えています。先を歩いた人たちの体験が一番の力になる、とそのとき感じました。

その間、生体が持つ自然治癒力とそれを助ける種々の摩訶不思議な「力」について知ることができましたし、結果、生命力のほうがまさりました。
人間は「生かされている」、と、心底思えるようになったのも、この時の経験のおかげです。
10年かかりましたが、ステロイドも、他のクスリも何も使わずに、まあまあ健康になってきて、少しずつ社会生活への参加が可能になりました。

その後、アトピー由来の網膜はく離の手術以外、お医者さんにはほとんどかからず、クスリは花粉症の時期に飲むだけで、しのいで来ました。
風邪で熱が出ても、安静にして経過を待つと自然に治るものですし。
なので、今回は、久々の大事件でした。いやー、大変でした。

まだまだ痛みはあり、フツウの生活とは行きませんが、確実に快方に向かいつつあるようなので、こんなふうに書けるようになりましたが、病気は、ある日突然やってくる、と痛感しました。

私自身、病院のリハビリのセクションに身を置いたこともあり、突然降りかかってきた病気や障害と付き合って行かねばならない方やそのご家族のやりきれない気持ちを身近に感じていました。
つらい時期を抜けていけるように、寄り添い、できることをする………ように、自分に課してきたつもりです。

今回の息子の「急性腰痛症」を通して、ほんとにいろんなことを考えさせられました。(すごい症状だったのに、ついたのはありふれた名前なので残念です。もっとも、腰痛の8割以上は原因が定かになっていないのだそうですね。)
重いものを持ったり、ムリな姿勢をして「ぎくっ!」となる………って思っていますが、腰は「体の要(かなめ)」と書くとおり、疲労や栄養の偏り、ストレス、その他、生活全般のムリが腰に来る………ものなのだそうです。

皆さまも、気をつけて下さい。


弱い側の立場になると、人の親切や善意が身にしみます。
病院の先生の辛らつだけど底にあたたかさが感じられることばとか、給食を運んできてくださる方が言ってくれた「いいお箸ですね!」とか、点滴用の針がなかなか入らないときに「全力でやるからね」という同じ高さに立ったことばかけとか、「よくしてあげたい」「治してあげたい!」と思ってくれていることがはっきり分かるリハスタッフや、鍼灸の先生のことばなどなど。本当にありがたかったです。

勤め先である塾は、ちょうど彼の父親世代にあたる塾長と長男とで、一対一または二対一のていねいな個別指導を行う塾です。
もともと体力がなく、9時−5時フルタイムの勤めにはとても耐えられそうにない長男にとってはもってこいの仕事でした。
通常の塾であれば、突然休み始めて5ヶ月も休んでしまえばクビになってもおかしくないところですが、塾長は「みんなが、中川先生が戻ってくるのをクビを長くして待ってますよ」とニコニコ笑いながら、休みの間、生徒さんを代わりに引き受けてフル回転して下さっていました。
病院のリハスタッフは、皆さん、仕事のことを気にして「こんなに長く仕事を休んで大丈夫?」と聞いて下さいましたが、そんなわけで「大丈夫」だったのです。

まだまだ、目も手も離せませんが、やっと、通常運転に戻りつつあります。
鍼灸整体の先生には「毎日お灸をするといいですよ」とアドバイスされ、一日二回、あれこれのツボにせっせとお灸をしています。
一ヶ所ずつの時間はせいぜい5分くらいなのですが、腰、背中、足、手、と場所の数が多いので、結構時間をとられます。
待っている時間に、ついでに、自分にもお灸をしています。ひじのところにお灸をすると、肩こりが、あ〜れぇ〜 ラクになるのは実に不思議。
これは確かに効き目があるわ!と実感するので、息子にも、休まずせっせと続けています。
一方、ごたぶんにもれず、高齢者介護問題も進行しつつ………です。

仕事は、いざというときには家族を優先させられるよう、今まで以上に選り好み(?) してボツボツやって行きますので、よろしくお願いします。

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「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。

疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

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