ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

世田谷区で一人暮らしをしている高齢の母から夜になってから「かかりつけ医のお盆休みを忘れていて、飲み薬が今日までの分しかなかった!」とメールが来ました。
あら大変。心臓とか血圧の薬なので、一週間くらい飲まなくても大丈夫、ともいえますが、薬で健康が維持されているとしたら、この暑さの中、一週間薬なしは心配。
近くにある医院は軒並み御盆休みのようです。

翌朝一番で、いつもお世話になっているケアマネージャーさんに電話して「この時期でもやっている病院を教えてください」とお願いしたところ、いくつも教えてくれました。
午前中しか診療していない公立の大きな病院には行かれません。私は午前中から四時までは仕事の約束があったので。
教えてもらった中に、下高井戸駅前のY小児科内科病院の名前があったので電話して聞いてみると、18時まで診療しているとのことだったので、そこに行くことに決めました。

そのY小児科内科病院には忘れられない懐かしい思い出がありました。
長男が3歳か4歳くらいだったでしょうか、夏の日曜日にアイスキャンディーを食べたら急にひきつけたことがありました。
私たち一家はそのころ、世田谷に住んでいて、当日の休日診療当番医がY病院でした。ひきつけはわりあい簡単におさまりましたが、ともかくも受診!!
かかりつけだった国立小児病院(当時。現・成育医療センターに統合)でのデータや、既往歴などは忘れず持参しました。

Y先生はやさしく「心配いらないでしょう」と言ってくださり、「心配いらない」と判断した理由をちゃんと話してくださいました。
そして、持参した書類を見ながら、「アレルギーの値(IgE)がこれだけ高いのに、喘息の発作は少ないほうですね」とおっしゃいました。
息子のIgE値は、かかりつけのアレルギー専門病院で「こんなに値の高い子は、この病院始まって以来だ!」といわれるほどでしたから。
「精神的には強い子だと思うのですが、そのおかげでしょうか?」と言うと、Y先生はにっこりして「お母さんの育て方が間違ってないからでしょう」とおっしゃいました。
私の最初の本「ことばをはぐくむ」(ぶどう社)のあとがきに書きました。
今でも、Y先生のこのことばを思い出すと涙が出てきます。ありがたくて。

昨日母を診てくださった若い先生は、多分、以前のY先生の次の代の先生だと思うのですが同じYという苗字でした。
事情を話すと、「わかりました、10日分でいいんですね?」とやさしい笑顔。
母が「こんなポカをするなんて。日に日に物忘れがひどくて・・・」と嘆くと、先生は「お歳は?え? 92歳? 92歳でちゃんと一人で薬の管理ができているなんてそれだけですばらしい!! 92歳で、忘れっぽいなんてことを悩める人は少ないですよぉ」と言ってくださいました。
「ガマンしすぎないで冷房はちゃんと使ってくださいね。」とも。

高齢者に対して親切なお医者さんやお店は最近いろいろあります。でも(これは私のひがみ根性かもしれませんが)「はいはい、おばあちゃん、大丈夫ですよ」「おばあちゃんだからどうせできないだろう」「どうせわからないだろう」みたいな前提があっての親切さ、上から目線の親切を感じることの方が多いのです。

Y若先生のおっしゃり方は、それらとは全然違っていて「ひとりの人として大事にしてもらった」という感じがありました。
母も「そんなふうに言っていただくと、元気が出ます!」とうれしそうでした。

私も日ごろ、「来てよかったです」とか「安心しました」と言っていただけるような相談を心がけているつもりですが、なかなか至らないことばかりで。
Y若先生のふるまいから、当事者側としてのいろんなことを、思いました。

年齢や立場や肩書きを超えて、人としての平等、対等。
仕事を通じて、その思想を表現するのは、言うは易く、行うは至難です・・・。

■後日談■
一週間ほどしてから、用事があって、下高井戸のY内科小児科病院の受付にいきました。
朝一番で、まだ患者さんもちらほら。
その時、目の前を、忘れもしない、30数年前に長男を診てくださったY先生が通りかかりました。ちらっと目が合っただけでしたが、そのやさしそうな目を見ただけで、思わず、うるうるっと涙がこみ上げてきました。こんな経験は、あまりしたことがありません。
あれは、何だったのかな〜と、不思議です。
オーラというものなのでしょうか・・・。

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