ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

  12月6日、大阪で開かれた「日本コミュニケーション障害学会 第29回講習会 『リハビリテーションに役に立つ脳と心の視点〜高次脳機能障害の理解のために』」に参加してきました。

  失語症を扱うSTは、失行・失認を含めて、高次脳機能障害にかけては誰にも負けない! と言い切れるだけの力量を持っているといいのですが、残念ながら、目前の患者さんたちの「訓練」に追われて、なかなか広い視野を持つことができないでいるのだなぁ、という感想を持ちました。  

 講師の宮森孝史先生は臨床心理をバックグラウンドとする先生でした。本当に充実の講習会で、10時から16時半までが短く感じられるほどでした。知的興奮って久しぶりの体験でした。  

  宮森先生は、右半球損傷の方たちの構成失行、観念運動失行、着衣失行や、半側空間無視などの例を豊富に挙げて話してくださいました。私も、昔、病院のリハビリテーション室に属していたころ、脳血管障害や交通事故後の脳の損傷のためにおきる様々な症状の患者さんたちにお会いしていたころのことを思い出しました。
  半側空間無視なんて、教科書では習いましたが、目の前の患者さんが実際にそのような状態でおられるのを見ると、不謹慎な言い方ではありますが、「脳ってスゴイなぁ・・・」と感動したものでした。同時に、STとして、どう工夫をしてもそういう状態を治してあげられないという無力感にもさいなまれましたっけ。

  今は、私は、いわゆる発達障害のお子さんたちと多く接するようになりましたが、子どもの行動を理解し、望ましい対応策を繰り出すためには、高次脳機能障害の知識が不可欠だといつも感じています。特にLDの場合には。 でも、今日の宮森先生のお話で、「右半球損傷による症状」という視点を導入すると、ADHDやPDD(広汎性発達障害)のお子さんたちの行動も、より理解しやすくなるように思いました。

 脳科学、脳画像診断が進み、病巣部位、障害部位を特定することによって症状をキレイに説明しようという方向でものごとが動いているような昨今ですが、それには獏とした違和感を感じていました。その“感覚” があながち間違っていなかったらしいと確信できて、ちょっと興奮気味です。世の中には、広い視野での研究をしている研究者がおられるんですねーーー。

宮森先生が監訳された本が紹介されました。早速買って読んでみようと思っています。 

『右半球損傷  認知とコミュニケーションの障害』 P.S.マイヤーズ 協同医書出版
   

  アマゾンでは次のように紹介されていました。面白そうでしょう??
患者のQOLに重大な影響を及ぼす右半球損傷による障害、特に認知とコミュニケーションの障害について広く研究を概観し、その診断と治療、リハビリテーションに関して十分な情報を提供する、臨床的視点を重視した待望の書です。
病識が浅い、楽観的、集中力に乏しい、意欲が空回りする、指示に従わないといった右半球損傷者の特性が、なぜ生じるのか、そして、どのように対処したらよいのかについて、それぞれ認知機能障害とコミュニケーションの視点から丁寧に解説されています。
密接に関連し合っていることの多い右半球損傷の徴候や症状に関しても、臨床経験や実験、そして様々な研究を交えながらその関連性について詳説されており、臨床家にとっては治療へのさらなる応用のヒントが、研究者にとっては患者の行動に影響を与えている一連の症状をより深く知るための手がかりが豊富に示されています。

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