ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

みたてと見通し

マザーグースのグレートマザー

数年前に北海道・釧路の保健師さんにお招きいただいたのがご縁で、堀口貞子さんと知り合いました。堀口さんは「マザーグースの会」代表の小児科医。いや、その逆かな?いずれにせよ、二つの顔が表裏一体、切り離しがたく結びついての果敢な活動。釧路の驚くほど活力あるさまざまな取り組みのかげには、堀口さんの存在も大きいと私は思っています。

「マザーグースの会」は1993年に釧路市で設立された「“障害”があってもなくても子どものすこやかな成長を願ういろんな人たちの集まり」です。「発達教育」20003月号 20014月号 に堀口さんが書いています。

北海道道東地域で「マザーグースの会」を知らない方はまさかないとは思いますが、北海道から遠く離れて住んでいる方には、「ゴキゲン子育て」を読んでごらんになることをお勧めします。「マザーグースの会」から発展した「地域生活支援ネットワークサロン」の発行です。

会報の「マザーグース便り」を毎号お送りいただくので、そのつど、へぇへぇ、ほぅほぅと感心しながら読みます。私がSTをこころざすきっかけを作ってくださった大阪教育大学名誉教授の竹田契一先生も、釧路の方たちとは浅からぬ因縁らしく・・・。不思議。

 さて、送っていただく「便り」には、毎号代表である堀口さんがあれこれ書いているのですが、これまた、興味深い内容。最新の69号の記事はひとりじめするにはもったいなかったので、少し変更して引用します。

自然に治る病気と小児科医の役割

「みたて」と「見通し(向かう先)」

『インフルエンザ、ヘルパンギーナ、プール熱。小児科医の仕事の大半は、こういうセルフリミット(自然に治癒する)疾患を診ることで成り立っています。お医者さんがいてもいなくても治る時が来たら自然に治る疾患。じゃあその子たちにとって、私たち小児科医の役割って何なのでしょう?

たとえば突発性発疹。お母さんは可愛い赤ちゃんの初めての発熱にパニック寸前。でも「あー、おそらく突発性発疹ですね、大丈夫、三日後に熱が下がって発疹が出ますよ」と言って、そのとおりになった時ほど親ごさんに感謝されることはありません。「いえ、いえ、あたしは何もしてませんから」「でも、先生の言ったとおりに発疹出ました!」とお母さんはニコニコ顔です。

これってどういう事でしょう?こっちは何もしていないのに、でもお母さんはにっこにこ。つまり、これはお母さんに「みたて」と「見通し (向かう先)」を説明できたということなのではないでしょうか?』

“障害”にかかわっての「みたて」と「見通し」

堀口さんの二番目のお嬢さんはADHDというか、高機能自閉症というか、ともかくなんらかの支援を必要とするお子さんでした。でなければ、いくら堀口さんが活動的な人だからって、本屋さんでばったり会った人と意気投合して「会」を立ち上げての果敢な活動はしなかったのでは?

堀口さんの娘さんは、高校卒業後、札幌に下宿してYMCA国際ビジネス・社会体育専門学校」の「ライフラーニング専攻コース」を卒業しました。

文章は続きます。

『数年前、娘が中学生のころだったと思います。主治医のK先生に「娘が本当の意味で思春期を迎えるのはいつごろでしょうか?」とたずねるとK先生は「おそらく20歳ころでしょう」と具体的に答えてくださいました。私はここ12年その言葉を折にふれて思い出しています。本当に20歳だ。その通りだった。今まさしく彼女は思春期を迎えているのです。これが「見通し(向かう先)」というものではないでしょうか?』

発達“障害”にかかわる専門家の役割

堀口さんは専門家(医者)であると同時に定型発達ではない子の親として、双方向からものごとを見て、発言もしてきました。その彼女は言います。

『(お会いした小さいお子さんの)お母さんに「自閉症特有の泣き方ね」と「みたて」は伝えたけれど、その先の「見通し」は、ちゃんと言えただろうか。これからの「向かう先」を果たして私自身分かっているのだろうか?

それを言えなきゃプロでないんじゃないの?』

私も、同感。医療に限らず、発達障害や子育てにかかわる「専門家」すべてに期待されるのが「みたて」と「向かう先を示す」役割だと思います。

「みたて」のほうはソレナリにこなせるかもしれません。でも、「見通し」のほうは、自分自身が人生経験を重ねることと同時に、子どもたちがどんな経過をたどり、どんな大人になったか、今幸せなのかどうかを実際に知っていなければ親ごさんに伝えることはできないでしょう。

ここでも「連携」の果たす大きな役割を見つけました。

年齢別に分けられることなく、一箇所に囲い込まれることなく、同じ地域に住む人たちが、顔をあわせ、声を交わし合う関係の中で、自然にできる情報の流れ。

地域で開かれる研修会や講演会情報が自然に耳に入るような「地獄耳システム」を標準装備とし、そういう会にマメに顔を出し、知り合いの輪を広げる。

「マザーグースの会」やそのほかの釧路の人たちがこれでもかこれでもか(?)とばかりに繰り広げる講演会や研修会は、勉強だけでなく、連携の機会でもあり、また経験の浅い人たちを教育する貴重なチャンスなのかもしれないな、と思います。

マザーグースの会
事務局
(堀口クリニック)FAX 0154−52−2858

NPO法人 地域生活支援ネットワークサロン HPアドレス

http://www.est.hi-ho.ne.jp/mother/

「ゴキゲン子育て」(改訂版)申し込みは上記サロン FAX 0154-44-5528

お問合せ・ご相談はこちら

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。

疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

お気軽にお問合せください