ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
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「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

2008-09-24

ティ一ングからコーチングへ

白いシャギーマットとシソジュース

「一度会ってみたい、あこがれのタレントをひとりだけ思い浮かべてください」と講師は言いました。「福山雅治でも稲垣吾郎でも、トム・クルーズでも」

これはつい先日わが町の保健師さんが企画してくれた「コーチングセミナー」の第一回目に参加したときのこと。

子育て真っ最中のお母さんや、子育て支援にかかわる市の関係職員など40人ほどの参加者がそれぞれあこがれの人を思い浮かべたところで「では、その人のことは横において・・・」と講師・。

「我が家の居間のテーブルの下に敷いてあるフワフワのラグマットを半年ぶりに洗濯しました。洗濯機に入らないので、わざわざ近くのコインランドリーまで行きましたよ。こんなに白かったか、と思うほど真っ白になったそのマットを持って戻り、居間のテーブルの下に敷きました。そこへ2歳になる娘がやってきます。シソジュースの入ったコップを持っています。よろっとつまづいて転びます。真っ白だったマットには、シソジュースの大きなしみが。

その時、あなただったら、お子さんを怒りますか?」

参加者「そりゃあ、怒ります」

講師は続けます。「では、さっき思い浮かべていただいたあこがれのタレントがお宅に来ているとします。その人がシソジュースを同じようにラグマットにこぼしたとしたら、あなたは怒りますか?」

参加者「怒りませんとも!」

怒りの感情をコントロールしているのは自分自身だった!!

講師「せっかく洗ったばかりの、真っ白なラグマットに、シソジュースのしみができたっていう状況は同じですね。状況が同じなのに一方に対しては声を荒げて怒り、一方に対しては怒らない」

参加者(あれ、ほんとだ、という感じで苦笑)

講師「ということは、『怒る』という感情をコントロールしているのは、自分だ、ということですよね」

そうだったのかー。私は深―くうなずきました。

仕事上お会いするひとさまには、気長で、辛抱強く接することができると自分では思っている私ですが、家族に対しては、山ほどの不平不満が。

相手が悪い! 私はこんなにやっているのに!と、マイナス思考にはまり、相手を責めるという循環に陥りがちです。

「何で、あなたは!」と大声で言い合いでもすればすっきりするのでしょうが、それも大人げない、とセーブするので、なおストレスが溜まる毎日。

でも、言われてみれば、確かに、同じ行動をされても、相手が違えば、こんなにいらいらすることはありません。我が家の玄関にクツが脱ぎ散らしてあると、「全くもう!」と怒りながらそろえるのに、カーペット敷きの相談室への入り口で、スタッフのクツがパパっと取り散らかっていても「あらあら、急いで部屋に入ったのね」と、平静心でそろえられますもの。

具体的な、実行される提案

さらに講師は続けます。

「では、なぜ、自分の2歳のかわいい子に対しては怒ってしまうんでしょう? そう。子どもには、転ばない子、転ばずにシソジュースのしみをつけない子でいてほしい、って期待している。その期待が裏切られるから怒るのではないでしょうか。最初から期待していない相手には怒らないですむことも多いんですね」

あ、ほんとだー。スタッフに対しては

「クツをちゃんとそろえて脱ぐ人になってほしいわ」なんて期待してないもの。

講師「怒らない−怒る の間にはさまざまな段階があります。そのどのレベルにバーをおくか、怒りの感情をコントロールしているのは実は自分なんですね。

おうちに帰ったら、このことをメモにして、冷蔵庫の扉と、トイレと、玄関とに貼っておいてください。人間って忘れやすいので、絶えず目で見てインプットするようにするのが効果的ですから」

ここでも舌を巻いている私がいます。そうかー、ここまで具体的にイメージを伝えることが大事なんだ。私のアタマの中には、すでにトイレの壁に貼ってある「怒りのレベル」のメモが浮かんでいます。帰ったらすぐに実行しよう、と。

自分をほめるタネ探し

講師はさらにこうも言いました。

「そんなメモを貼ったからといって、『今日から怒らないお母さん』になんかなれっこないですよ。でもね、『また怒ってしまった・・』ではなく『いままで10回怒っていたところをメモのおかげで9回に減らせた。すごい、がんばってる私』って自分をほめられたら、うれしいでしょ? うれしい自分がいて初めて相手も生かせる。自分を大事にしたいですね」

確かに・・・。療育や教育や保育をやっていると、まだまだ足りない、もっとやってあげたいってがんばって、結果、自分も相手も追いつめるハメになること、多いもんな・・・。

ティーチングからコーチングへ

最近、巷で大流行のコーチング。心理学やカウンセリングやマネージメントなどの手法を取り入れて発展してきた人間関係改善のためのメソッドです。本は山積み、インターネットにも情報があふれています。あまりに急発展の分野なのでセミナー内容は玉石混交だそう。でも、本来ひとの中にある力をじょうずに引き出すことをめざし、同時に自分の成長のための視点も入っていて、何より職場や学校、夫婦、親子、いろいろな場面に応用できて毎日の役に立ちそうです。

批判する、責める、文句を言う、ガミガミ言う、脅す、罰する、ほうびで釣るといった、実効性が少なく、相手に力をつけることの少ないやり方ではなく「共に成長する」ことが自然にできる工夫が随所に盛り込まれている「コーチング」。これからも体験学習や、理屈面のベンキョーをしてみようと思っています。

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