ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

子どもを大切にするための仕掛けは自分もうれしくなる仕組み

検便とかレントゲンとか 

長く生きてきたつもりだったけど、なんと知らないことだらけなんだ、って思うことが続きます。特に、学校とか、行政の関係者と一緒に仕事をすることがふえた昨今、療育一辺倒だったころに比べれば、ずっと視界がひろがった実感。

こないだも、へぇーと感心したことが。全国的に中学生の職場体験が進められています。昨年までは一日だけだったのに、今年は三日に増えた自治体が。「それはいいことだ」って、思うでしょ?単純に。でも、一日だけなら受け入れてくれる事業所も、三日となると負担感が大きくて二の足を踏むため、受け入れ先を見つけるのが大変なのだそうです。納得。

例年受け入れている保育園でも、三日間となると事前に細菌検査(検便)が必要では、という意見が出てその費用をだれがどう捻出するかが検討課題としてあげられたとも聞きました。確かにねー。

そういえば私の市でも、私たち保健事業や療育にかかわる非常勤や嘱託の職員も、毎年レントゲン検査の提出を義務付けられています。自分で検診のチャンスがない人は、市が胸部X線検診の日程を保障してくれている、市の予算で。

One  of  としての特別支援教育

 わがK市では、校内委員会の全校立ち上げに引き続き、昨年から巡回専門家チームによる巡回が始まりました。初年度は一回。二年目にあたる今年は年二回。外から見てるだけだと、「始まりましたったってわずか一回か二回で子どもたちの生活はよくなるわけ?」ってかみつきたくなるところでしょ?

でもね、自分が療育や教育に縁が深いと、そこばかりが大事に見えるけれど、市全体から見ると、町づくりとしての商業振興とか、情報発信のための仕掛けの改善とか、やるべきことは山積み。学校教育関係を見ても、体育館の屋根の補修は待ったなしだし、部活動が優秀な成績をおさめて全国大会に出場することになればうれしさ半分困惑半分。旅費や宿泊費を補助してあげたいけど、捻出するのは一苦労。「ひとりずつに行き届いた教育を」の実現としての少人数指導のための人員配置も必要、など、ほんとにたくさんの事業が並行的に行われ、そのための予算措置がなされています。

2枚でも予算を生かすコピーかな?

検便とかレントゲンとか巡回専門家チームとか、一つずつは小さなことですが、どれも「子どもを大切にする」ということの具体化。行政はこういうふうに、見えない場所で、ささやかなセフティネットをたくさんたくさん張り巡らして、市民生活を支えているんだ、って痛感。

“障害”にかかわる項目は、市全体のたくさんの課題の中のたった一つの項目にすぎないと知れば知るほど「この厳しい予算状況の中で、よくも、巡回の予算取りができたこと!市当局も、よくぞ予算を認めてくれました! 感謝! キミたちはよくがんばった!」って思えます。

不十分なことはそりゃまだたくさんあります。でも、せっかく取れた予算を感謝をもって活かさなきゃ、とも思います。

 先日は、「急にキレることが多く、その際に何日も何ヶ月も前にあったことを脈絡なく持ち出す」というお子さんがいて先生方が困惑していると聞きました。その子の行動の仮の理解のために役立てばと思い、ある本の「タイムスリップ現象」の項目のところを二枚コピーして持ってゆきました。その行動の起きる理由をどう理解し、どう対応したらいいかが簡潔に書いてある本です。「参考になれば・・」とコピーを差し出すと、居合わせた先生方が、「あー、ここに書いてあるとおりだー」と私の方がうれしくなるほど感心してくださり、早速職員室でコピーして、そのお子さんに関わる教員たちに何人にも、声かけして配ってくださっていました。子どもへの理解、少し深まったかな?許せる範囲、少しひろがったかな?

励ましあう関係を持続して楽しみへと

学校での研修会や巡回の場合、一回だけの言いっぱなしで何ができるって無力感にさいなまれたり、逆に、この機会に支援の必要な子のことを通常学級の先生方に理解してもらいたい、って力が入りすぎて逆効果になる場合が多いと思います。少なくとも、過去の私はそうでした。

でも、今は少しちがいます。わが市では学校に継続的に支援に入っている人がいると知っているからです。小学校に週一回ずつ派遣される教育相談室の相談員5名と都の予算で中学に週一回派遣されているスクールカウンセラー4名です。

教育相談員は全部で5名。心理職またはSTで、週3日勤務のうち1日は、朝から夕方まで担当した小学校にはりついて、先生方や子どものサポートにあたります。教育相談員の全体カンファレンスで市内の学校や子どもたちの状況共有をはかっています。小学校が6校というマイナーな狛江ならではかもしれません。

今までは連携が薄かった中学校のスクールカウンセラーですが、担当学区の学校の巡回の際には必ず加わることになったおかげで、小学校を担当する教育相談員と顔をあわせる機会が保障され、巡回の場が同時に支援者同士の相互理解や情報交換の場にもなりました。

年にたった二回の巡回の場ですが、そこが「子どもを支える人」である教員を支える機能を持ち、同時に、その教員を支える人たち(教育相談員やスクールカウンセラー、各校で指名を受けた特別支援教育コーディネーターや副校長など)を支える場所にもなるよう努力しなければと思います。

「またお会いできましたねー」と、互いに喜びをもって顔を合わせられるような関係の積み重ね。それが、子どもたち、親ごさんたち、先生方、そして何より、自分たち自身を元気にしてくれるのだなーと実感します。まだ今の所は悲壮な覚悟で一人でがんばらざるをえない状況の方たちのためにも、今、私がいる場で、「みんなでがんばる」陣地を広げていかねばならない、と思います。

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「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。

疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
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