ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

心の中の止まり木

学会、のち時々、晴れ

金沢で学会がありました。第7回日本言語聴覚学会といういかめしい題で、内容もおカタイものが多いです。

医療職の一端につながるST(言語聴覚士)は、明確なエビデンスを示すことを常に要求されます。エビデンスというのは、根拠、っていうか、証拠、っていうか・・・。つまり、効き目があるってことを数値できちんと示せ、ってこと。

「あの親子さん、最近明るくなったね」「着ているものの色が変わってきたものね」だの、「笑顔が出てきたから、きっとコトバの方も伸びてゆくよ」みたいな、保育や療育や教育の関係者の間ではあたりまえの、つまり、経験則から見て確率の高い内容の会話は「証拠があるか?」って突っ込まれたら、うううって詰まらざるを得ない。エビデンスを示せない私たちは、いかめしい医療職の前ではおどおど小さくなっていなくてはならない、そんな感じ。

  子どものSTにも、少し光が!

でも、今年(平成18年度)の学会テーマは例年とかなり異なっていて、「地域における言語聴覚士の役割――コミュニケーション障害のある人の生活支援」でした。私も「成長時期ごとの、小児・保護者への支援」というシンポジウムにシンポジストとしてお声かけいただき、「支援の入り口としての健診におけるSTの役割」というテーマでお話をしました。健診のことを知ってもらうには、またとないチャンスだ、と思い、二つ返事で引き受けたものの、準備には手こずりました。無事つとめ終え、ほっと一息ついています。

 STは、大多数が医療の中で、成人を対象として、エビデンスを示せる仕事をしているので、子どもを対象とする私たちは、「どうせ、マイナーさ」みたいにどことなく斜めに構えているフシがあるのですが、ある人いわく、「
私たち子どものSTは、言語聴覚士の団体の中では
かなり端っこのほうにいることは自覚しているけど、今回の学会に出て見て木漏れ日は少しあたっているのかもしれないと思いました」
 私も同感です。

プチホテル○○

 金沢の楽しみ。そう、お魚がおいしいこと、あたりー。お酒は・・・・飲めないから残念。

金沢の楽しみのもうひとつ。それは、泊まるのがうれしいホテルがあること。犀川沿い、御影橋という橋のそばの「プチホテル○○」という、部屋数8室だけの、小さなペンションみたいな家族経営のホテル。

56年前、たまたま、金沢に行くことになって、ネット上で探していたときに知りました。「とにかく食事がおいしい、安い、居心地がいい」という書きこみにあふれていたので、おそるおそる泊まってみたのでした。

その時は石川県と、国の母子衛生関係の外郭団体の共催での講演会で、県庁の担当者が黒塗りの公用車で迎えに来てくれる、っていうようなたぐいの催しだったので新聞にもお知らせ記事が載っていたんですが、なぜか、そのプチホテルのオーナーっていうか、オジサンが、そのことも、私のことも知っているみたいだったのです。ちょっと不思議。

でも、はじめての時は人見知りをする私は、オジサンとは、あまり話もせず、でも、夕食のお魚料理の豪勢さと、おいしさと、それでいて、一泊二食7500円という価格にほれ込み、それ以来、金沢に用事があるたびに泊まるので、今回が4回目。

今回、オーナーは『子どものことば』という本をどこからか出してきて、記念にサインを、という話になりました。

この本は1992年に新日本医師協会というところから出た、ごくマイナーな本で、私がまだSTとしての進化の途上にあったころの本。一般の流通には乗っていないので、一部の保育士さんや保健師さんしかご存じないはず。なので、ええー、と驚いて聞いてみたら、なんでもオーナーの奥さんが、「そういう関係の仕事」をしているのだとか。世間は狭いですねー。

 安心できる人や場所

今年の1月にも金沢に行きました。石川TEACCH研究会のお招きで。石川県は、障害のある人たちを地域で支えようとする動きが盛んで、上記のTEACCH研究会のメンバーの中にSTさんも多くおられ、おいしいものをたくさんご馳走になり、意気投合して帰りました。意気投合したのはご馳走に、でもありますが、ココロザシに、です、念のため。

なので、今回「学会」という肩の凝る集まりではあっても、「あの知り合いのSTさんたちが裏方をやっているんだから」と思えて、いつもよりは少しラクに参加できたかな、と思います。見えるもののウラにある、みえない力。

おまけに、プチホテル○○に行けば、オーナーと、娘さん夫婦と、それにおいしいご馳走に会えるっていう楽しみも。

子育ての旅の途上、安全な止まり木

いくら旅なれても、旅は幾分かは心細いもの。行く先に、「知っているひと」「心許せる人」がいることは大きな安心材料。

子育ても、少し旅に似ていると思います。この道を行けば必ず目的地に着けるかどうかわからず不安。そもそも、目的地の設定からして、ちがっているかもしれないのだし・・・。

そんなとき、「困ったらあそこに行こう、あの人が笑顔で迎えてくれる」って思える場所や人があったら、どんなに助かるでしょう。心の中で「あの人」や「あの場所」に支えられている、ってこと。

異動することなく「ひとつの場所にずっといる」「そこに行けば必ず会える」開業医とか、民間の団体とかの果たす役割はとても大きいな、って思います。こんな安心できる止まり木みたいな存在が地域に多くあるといいのですが。

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