ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

  来週、久しぶりに母と一緒に短い旅行をする予定があるので、今日、車イスを借りに行きました。母は、年齢よりずっと元気で、気持ちも若いのですが、最近、長く歩くと足が痛くなることがあるので、出先での万一に備えて、です。

  X区は、区内のいくつかの場所で車イスの短期間の貸し出しをしてくれます。今日、センターに着いたのはちょうど昼休みの時間でした。でも、当番で窓口にいた男性は(どうやら、係長だったらしいのですが)とても親切に応対をしてくれました。

  事前に電話で問い合わせた際に、(念のため)私と母の両方の印鑑を持参してくださいと言われたのですが、実は印鑑は不要でした。窓口の係りの方は、電話での説明が間違っていたことを盛んに恐縮し、すみませんと言ってくれました。

  「意外に重いものですね」とか「最長どのくらい借りられるんですか?」とか、今まで何回も聞かれたであろうことを言っても、じゃけんにすることなく、最後まで親切でした。    親切に貸してもらった車イスは、「親切な車イス」のように思えて、大事に使おうと思いました。また、旅行のあいだじゅう、クルマの後部に「親切」が乗っているんだな、と思うと、何だかとてもうれしい気持ちです。

  ひさしぶりに、相談しに行く一住民の立場になってみて、あらためて「親切な態度」が心細い気持ちの人にとって、どんなに大切なことか、と肝に銘じました。

  この夏の休日は、すべて、自宅の建て替えに伴う仮住まいへの引っ越しに費やしてしまいました。すぐそばに仮住まいを借りたのがよくもあり悪くもあり、で、なかなか最後の仕上げまでたどりつかず、ひと月以上かかって、旧宅はほぼ空っぽになりました。ふぅ (-_-;)

  そんな事情があって、夏の遠出の講演依頼の多くは、事前にお断りしたのですが、北海道からのご依頼だけは二つ返事でお引き受けし、8月の20、21、22は、十勝に行っていました。十勝地方の「ことばの教室」の先生方の集まりと、その近くの「ことばの教室」の親の会主催の集まりでお話ししてきました。

  「ことば・きこえの教室」の全国組織は「全国難聴言語障害教育研究協議会」(全難言協)です。
http://www2.plala.or.jp/nangen/

  通級制の学級(教室)なのですが、親と先生が協力して運動を進めてきたという経緯があり、多くの教室には「親の会」があります。
 同じ思いを分かち合う親ごさん同士の支え合いの力には、いつも感激しますが、今回も、最終日、親の会の方たちと一緒にお昼ご飯を食べながら、自分の子どもの保育園時代を思い出しました。当時、親同士も仲がよくて、休日は、誰か彼かが遊びに来て家の中を走り回っているか、または、誰かの家に遊びに行って留守だったりして、まるで15人の子どもを中心にした大家族みたいでしたが、そのころのことを思い出し、本当に楽しかったです。
  「子ども“たち”を、大人“たち”で育てる」ということの大切さを、あらためて痛感しました。

 もちろん北海道は涼しく、大地は広く、食べ物はおいしく、人は親切で「やっぱり北海道はいいなー」と思いながら炎熱の東京に帰ってきました。   また、十勝地方の支援者と言われる方たちの「こころざし」の熱さと深さには、あらためて感動し「すごいなー」「私ももうひとがんばり!」とパワーをもらいました。

  新書「発達障害とことばの相談」が出てから2週間ほどたちました。 今までも、本を出すとしばらくドキドキしたり、落ち込んだりしていましたが、今回は、落ち込んではいませんが、ドキドキハラハラしています。

  今までの本は、はっきりと障害を念頭においたものか、または、通常のお子さんを対象としつつ心配のある子、ていねいなケアの必要な子についても触れる、というスタンスでした。

  今回の新書は、いわば、定型発達と言われる多数派と、障害や凸凹があるかもしれない育てにくい子、発達障害かもしれない人たちとを意識的につなごうと意図しました。   つなごうとした、というより、障害とか障害じゃないとか言っても、結局、みんな、深いところでは地続きのところにいる仲間だよね、生きることって結構悪くないよね、ということを言いたかったのですが、それが、果たせたのかどうか、伝わるのかどうか、ドキドキしている、というわけです。

        そんな中、「ことばの教室Therapist's Homepage ブログ版」にya さんが感想を載せてくださいました。
私にとっては、身に余る、とてもありがたい感想でした。
http://kotobaroom.blog.shinobi.jp/Entry/276/
これを励みに、さらにがんばろう、と思いました。

  去る5月23日、東京大学で「公開シンポジウム  自閉症者の語る自閉症の世界」(主催:東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース)が開かれました。
  3人の自閉症の方たちが支援者と共に壇上に上がりました。
  会場からの質問にその場でパソコンに打ち込んで答えるのですが、ウィットに富んだジョークでかわすありさまは、何だか、とてもうれしくなる光景でした。

  そのときのシンポジウムのようすがHPにアップされたそうです。  
  http://plaza.umin.ac.jp/~katari/report_20090523/

  パソコンに向かって真剣に哲学的なことばを紡ぎだす姿と、緊張の糸が切れたあと、会場をぴょんぴょん走り回ったり、目を細めて横目でじーーーっと見る独特のしぐさをする姿との落差・・・・。   今も、なぜ、そんなことになっちゃうのか、にわかには信じられない気分と、でも、目の前で起きたことは事実だから否定するわけには行かない・・・・という気分とが混在しています。

  この筆談援助という方法を、どうとらえていったらいいのか、今後も迷いながら、でも、否定せずに考え続けて行きたいと思っています。

 「育てたいね、こんな学力     和光学園の一貫教育」
        大瀧三雄・行田稔彦・両角憲二 
        大月書店 2009年7月  1680円(税込み)
http://www.otsukishoten.co.jp/cgi-bin/otsukishotenhon/siteup.cgi?&category=1&page=0&view=&detail=on&no=460

  書評で見て思わず購入。電車の往復で一気に読み終え、文字通り溜飲の下がる思いがしました。
  「学力テスト」の結果、学力が低下したとなると、それ!学力向上、それ!学力テスト、それ授業時間を増やせ! と、世をあげてあたふたと浮き足だっているのは、何かおかしいと常々思っています。「学力」って、テストの点のことじゃないでしょうに。
  「学び」は、本来ワクワクする営みのはずなのに・・・。

  この本の中の一節に、こう書かれています。
  【和光では 『教師との一問一答式の授業』ではなく、『子ども同士の討論で答えを見つける授業』がよいと考えてきました。それを『問いと答えのあいだの長い授業』と言ってきました。
 つまり、(中略)子どもの疑問や気づきなど、一人ひとりの考えを大切にして、みんなで考えあう(中略)ということです】

  最後のまとめで教育学者の梅原利夫氏が学力の全体像についての考えをこう書いています。

①学びを求める力ーーーー学びへの要求ーーーーーー学びに向かう土台として
②学んでいく力ーーーーー 学びの持続的な行為ーーーわかる・できる・使える
③学び合う力ーーーーーーー学びのコミュニケーションー共同の学習
④学び取った力ーーーーーー学んで獲得・定着した力ーー学習の結果、身につく
⑤次の学びにつなげる力ーー学びの応用ーーーーーーー組み合わせて使いこなせる

  知識を得ることが生活を豊かにし、生活の中での疑問を解決するために学習や知識が必要になり自然に身につく・・・。
  そういう「当たり前」が、教育の中に実現するといいのに、と感じました。
 障害のある子どもにおいても、です。

    小学館のサイト≪「発達障害とことばの相談」・・・ことばを育てるために大人にできること≫に連載の2回目がアップされました。
  http://bp.shogakukan.co.jp/n-nakagawa/

テーマは語用論です。林やよいさんのカットがいつもと同じく、とてもわかりやすくかわいいです。
「教え込み」や「クンレン」ではなく、「一緒に」「楽しむ」スタンスでことばを育ててゆけるといいですね。
   もちろん、「じょうずに教える」ためのノウハウやツールも、必要なとき、必要な人には有効ですが。

  東京都では昨年度に引続き、都民向けの講演会とシンポジウムを、「現代の子どもが抱える心の問題〜ライフステージごとの発達障害の課題」をテーマに開催します。

1 日時

 平成21年9月23日(水曜日) 13時30分から16時30分まで

2 会場

 東京国際フォーラム・ホールC
 (千代田区丸の内3−5−1 最寄駅:JR・地下鉄有楽町駅)

3 テーマ

 「現代の子どもが抱える心の問題〜ライフステージごとの発達障害の課題」

4 プログラム(予定)

第1部 講演会

 現代の子どもが抱える心の問題について、医療、教育などの専門家がわかりやすくお話します。

 演者:
 鳥取大学教授         小枝達也
 あいち小児保健医療総合センター心療科部長兼保健センター長 
                   杉山登志郎
 東京都立梅ケ丘病院副院長 田中哲
 東洋大学教授          宮崎英憲

第2部 シンポジウム

 会場の皆様からの質問を中心に、第1部の演者によるシンポジウムを行います。

 コーディネーター:NHK解説委員 室山哲也

5 対象及び募集定員

 都民(都内在住・在勤の方)1,300名(先着順)※参加料無料

6 申し込み締め切り  9月11日

詳細はhttp://www.metro.tokyo.jp/INET/BOSHU/2009/07/22j7u200.htm

をご参照ください。

  新刊が店頭に並びました。
 「発達障害とことばの相談    
     子どもの育ちを支援する言語聴覚士のアプローチ」
            (小学館 101新書)        です。

  発達障害についての言語聴覚士的見方とあわせて、なかなか社会的認知の進まない言語聴覚士の仕事、リハビリテーション(全人間的復権)の考え方についても、ぜひお知らせしたいと思いました。

小学館の「BOOK  PEOPLE」というサイトにも内容紹介が掲載されています。
   ( BOOK PPEOPLE  中川信子のページ ) 

林やよいさんによるわかりやすいイラスト入りで、4週連載になる予定です。

本にも、サイトにも顔写真が載ったので、ちょっとマズイな、と思いつつも、発達障害やSTのことが広く世の中に知られることとひきかえならガマンしよう・・・と思っています。

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「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。

疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

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