ここは中川信子のホームページです。ことばの発達や障害について、
また、言語聴覚士に関連するさまざまな情報を配信していく予定です。

「そらとも」は「この空のもと、いたるところに、志を同じくする友あり」という意味です。
疲れて、ひとりぽっちと思えるときには、空を見あげ、胸いっぱいに元気を補給しましょう。
その曲がり角の先には、きっと新しい出会いと、すばらしいできごとが待っています。

  狛江に長くお住まいだった中村哲夫さんという方が、昨年7月に亡くなられました。享年80歳。大きな病気から一度回復され、元気なお姿を見かけて安心した直後だったので、私は大ショックで、お通夜に行く道すがら、泣けて泣けてたまりませんでした。お通夜に行くのに泣きながら行く、なんて初めてのことで、私の中の中村さんの存在の大きさを感じました。

 中村さんは、事業を営む一方で、音楽大好き、スポーツ大好き、狛江大好きの方でした。私は市内でコーラスをやっていたころに「狛江市音楽連盟」の親分(?)役としての中村さんにお会いして、いっぺんに子分になりました・・・。

  ちなみに、狛江では毎年6月に「初夏の音楽会」と題して市内の音楽グループ(コーラス、吹奏楽、器楽等々)が総出演する音楽会が開かれています。音楽を愛するもの同士、地域の中での横のつながり、という点でユニークな音楽会だと思います。

  お通夜で会った人たちの間から自然発生的に「偲ぶ会」をしようという話が盛り上がり、昨日(3月29日)心のこもった偲ぶ会が行われました。

  中村さんは、音楽連盟、スポーツ振興にかかわっただけではなく、狛江のまちづくりにも大きく関与されました。

  狛江にいらしたことのない方はどうぞ一度来て、駅前の豊かな緑をごらんになってください。狛江市民の自慢の一つです。
  当初はこれらの緑地を取り払ってどーーんと大きなビルを建てる予定があったのですが、中村さんたちを中心とする市民が粘りづよい、でも、果敢な運動を起こして、この緑を残してくれたのでした。

  もう一つの狛江の自慢は「むいから民家園」です。旧荒井家住宅を移築したもので、今、市民の大きなよりどころになっています。この「むいから民家園」開園に際しても、中村さんの大きな尽力があったそうです。

  中村さんは、ほんとにフランクで懐の深い人、あったかい人でした。どこで会っても「やあ!」って手をあげて声をかけてくださいました。一度会うと、その「オーラ」というか、人間に魅せられてしまう・・・というか。

  私利私欲ではなく、「狛江のために」「音楽のために」「スポーツのために」働いているんだ、ということが傍目にもよく分かるような・・・。    昨今は、そういう、「大きな人」がいなくなっちゃったなぁ、私たちがその後に続かなくちゃいけないわけなのだけど、人としての器の大きさがとてもとても及ばないよなぁ・・・・とつくづく思いながら、偲ぶ会から戻って来ました。

  「臨床育児保育研究会」は汐見稔幸氏(白梅学園大学学長・東京大学名誉教授)が主宰する研究会です。保育者、幼稚園教諭、保護者を対象とする隔月刊の機関誌「エデュカーレ」を出しています。

この「エデュカーレ」が全国読者交流会を企画しています。

日時  2001年6月6日(土)12時ー6月7日(日)12時
場所  山梨県清里 「清泉寮」

詳細は 以下をご参照ください。
   臨床育児・保育研究会 http://ikuji-hoiku.net/
          ↓                ↓

   エデュカーレ http://ikuji-hoiku.net/educare/index.html

ナカガワは、汐見さんとは大学時代からの親友?盟友?である関係で、「エデュカーレ」創刊時から連載コーナーを持たされて(もしくは、持たせていただいて?)います。
 (断り上手を自認するナカガワですが、汐見さんからの依頼だけは逃げおおせたことがありません。『語りかけ育児』しかり『はじめて出会う育児の百科』しかり・・・。)
 今回の交流会も、「連載コーナーを持っている」という理由からか、それ以外の理由からか、断る余地のない依頼をされたので、参加して、よもやま話をする運びとなっております・・・・。

  エデュカーレ読者以外でも参加できます。
保育や幼児教育で悩んでいる方々どうぞ。
エデュカーレの定期購読もどうぞ。役に立つ雑誌です。

 東京都自閉症協会の会員さんからいただいたメールを転載します。

        ↓  ↓  ↓

4月10日(金)、立川アイム第3学習室にて、 「アイムヒア 僕はここにいる」というドラマが上映されます。 http://www.autism.jp/imhere.html
10時半開始、1時間弱のドラマです。

このドラマは、大阪府教育委員会がつくったもので、発達障害の啓発のためのドラマです。
主役は、杉浦太陽くん。アスペルガー症候群という設定です。
  杉浦太陽くんは、モーニング娘にいた辻希美ちゃんのダンナさんで、最近ちょいちょいバラエティにも出ておられますね。

大阪府の教育委員会が作ったというと、固いようですが、脚本を公募して、当事者の方の実感のこもった映画ができているようです。じわじわと評判が広がって、でも、大阪以外ではみられないような話だったのですが、借り出すことができました。

あらすじは
 http://www.gakken-eizo.com/goods/social/94U4088004.html
からご覧ください。
大阪でTV放映された時に見たという私の知人は、大変良いドラマだったと、話していました。

 自閉症協会の会員も非会員も、どなたでも無料です。
場所は、JR中央線立川駅から5分。

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     定員80名です。ご希望の方は事前にお申し込みください。
申し込み方法等は 東京都自閉症協会の担当までどうぞ。
http://www.autism.jp/imhere.html

  毎年4月2日は国連が定める「世界自閉症啓発デー」です。 社団法人・日本自閉症協会は、関係諸団体と共に、「世界自閉症啓発デー・シンポジウム」を開催します。

時  2009年4月2日(木) 10時ー16時30分

所  東京

詳細は社団法人 日本自閉症協会 
 世界自閉症啓発デー  公式サイトをご覧下さい。

 

また、東京では上記シンポジウムのほかに自閉症の人の作品展が開催されます。

内容  関東近郊の自閉症の人の創作グループの作品、約60点

日時:4/3(金) 13:00 ~ 17:00
    4/4(土) 10:00 ~ 18:00
    4/5(日) 10:00 ~ 18:00
    4/6(月) 10:00 ~ 17:00
    4/7(火) 10:00 ~ 13:00

場所: 新宿文化センター展示室(東京都新宿区新宿6-14-1)

『教室でできる特別支援教育のアイデア172 小学校編』    月森久江編集 図書文化   2005年11月発行

  現場にいる先生たちが実際に行っている例が満載されています。
  読者レビューの中には、保護者が担任の先生と回し読みをして、できることを取り入れてもらったとの書き込みもあります。
  特別支援教育とは、「特別な子」への「特別な支援」ではなく、「何らかのニーズを持つ子」への「個別配慮」、つまりは「当たり前の、一人一人を大切にする教育」なのだということがよく分かる本です。

  なお、目次は次の通りです(「スペース96」サイトより)

パート2 も出ています。

    『教室でできる特別支援教育のアイデア 小学校編 パート2』目次

『特別支援教育コーディネーターの手引き〜特別な支援が必要な子どもたちへ④』(佐藤曉  東洋館出版社  2008年9月発行)

「この本は、何をしたらいいのかどうも分からない、と言われがちなコーディネーターのお仕事内容を、コンパクトにまとめた実用書です。保護者の方も、ぜひ学校の先生と一緒に読んでみてください。」(著者より)と書かれているとおり、本当に具体的で分かりやすく、先生方のテキストとしてばかりでなく、我われのような学校外で支援する立場の人間にも非常に有益な内容になっています。

  ↑

 この紹介文は、釧路の堀口クリニックの堀口貞子さんのHPからの受け売りです。 佐藤曉先生の本なら、ゼッタイはずれはないのと、目次を見たら、まさに今必要なことが網羅されていると思ったので早速注文しました。
「スペース96」のサイトに目次の紹介が出ています。

目次:

第1章 発達障害のある子どもを知る
障害と「困り感」
「困り感」は環境とのあいだで生じる(1)時間環境
「困り感」は環境とのあいだで生じる(2)空間環境 ほか


第2章 担任へのアドバイスをするために
特別支援教育の枠組み
個別的支援のセオリー(1)学校の仕組みを教える
個別的支援のセオリー(2)生活のシナリオをつくる ほか


第3章 保護者を交えたケース会
「保護者を交えたケース会」を企画しよう
「支援の基地」としての「保護者を交えたケース会」
「保護者を交えたケース会」実施の手続き ほか

  保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、専門学校・・・・・。 いろいろな場で、卒業式が行われている時期ですね。

  私は、この時期、毎年、必ず、小学校、中学校の卒業式に参列します。 なぜなら教育委員だからです・・・・・・。

  狛江市内には小学校は6校、中学校は4校あり教育委員は教育長を含めて5人しかいません。卒業式は市内全校同じ日に行われます。
  なので、ゼッタイどこかの学校があたります。
  教育委員のお役目は「教育委員会を代表して」登壇して「告辞」を読むことです。この時期は、壇上でくしゃみ発作に襲われないか、それが心配です。

  自分が生徒だったとき、また、自分の息子たちの卒業式では、黒い服を着た人が次々と現れて、変わりばえもしない祝辞を延々と読むので、「早く終わらないかなー」って思っていましたが、自分が読む側に回ってみて、いろいろなことが分かりました。

  「変わりばえもしない」ように思える祝辞も、それぞれの担当が(指導室とか、市議会の担当者とかが)心を込めて書いて下さっていること、教育委員会や市議会を“代表”しての祝辞なので、市内全部の学校で同じ内容のものが読まれる必要があること、A4版の用紙に縦書きで打ち出したものを糊で貼り合わせて巻紙風にする手間がかけられていること・・・・などです。

 一人ずつちがう、個性的な子どもたちが、大きく成長して一歩大人に近づく姿を見るのはうれしいものです。今日行った学校は、息子たちが卒業した学校だったので、昔のことをなつかしく思い出し、感慨もひとしおでした。  

  小さいころに気がかりなことのあったお子さんが大きく成長して、晴れの卒業の日を迎えている場合もきっとあるでしょう。   逆に、他の子どもたちとの違いを思い知らされる思いで卒業式に出席されるご両親もおられることでしょう。

  すべてのお子さんの前途が明るいものになりますように。 健やかで、充実した人生を送れますように、と願いながら黄砂と花粉の舞う中を自転車で帰ってきました。

  平成21年6月21日に開かれる第26回小児保健セミナー(主催:社団法人 日本小児保健協会)のテーマは「乳幼児健診とその周辺 −−今知っておきたいこと」です。

  私にもお声かけいただいたので、ご高名な先生方に混じり、「乳幼児健診とことばの遅れの見方」と称して、40分ほど、お話をさせていただくことになりました。   健診には長くかかわってきたものの、実は知らないことだらけなので、他の先生方のお話を聞くのが楽しみです。

     詳細は以下に掲載されていますのでご参照ください。
      
http://www.jschild.or.jp/aca/s_0906_1.html

言えない気持ちを伝えたい
発達障がいのある人へのコミュニケーションを支援する筆談援助

   筆談援助の会 編 
   エスコアール出版部
   2008年11月20日発行
   1900円+税

  「閉じ込め症候群」(locked-in  syndrome)ということばをお聞きになったことがあるでしょうか? 脳幹部梗塞などによル全身麻痺で全く動かせなくなった身体の中に知性、理性が閉じ込められている、という意味です。
  高次脳機能障害の一つでST(言語聴覚士)の対象でもあります。
コミュニケーションの方法を模索するのがSTの仕事ですから。

  最近では、実話に基づいた映画「潜水服は蝶の夢を見る」がありました。
主人公はフランスのファッション雑誌「elle」の元編集長。
交通事故にあい、全身麻痺、かろうじて動かせるのは片方のまぶただけ、というlocked-in syndrome状態状態になったのです。
  その元編集長が、病院のSTの手助けを受け、唯一残された機能「まばたき」によってアルファベットをつづり、一冊の本を書く過程が描かれていました。

  また、医学的には「閉じ込め症候群」とは呼ばれないかもしれませんが、周りの人たちが話していることが全部聞こえ、理解できているのに、ことばやジェスチャーなどで表現(発信)手段を奪われている状態があります。
  ずっと以前の映画「ジョニーは戦場に行った」がそれです。
(あらすじ: http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD4512/story.html

  同様に、外見上は重度の知的障害を伴う自閉症と見えるのに、文字による表現の手段を得ると、ほとばしるように、自分の気持ちを伝えはじめる人たちがいます。文字表現の方法はいろいろですが、まとめてFC(ファシリテーテッドコミュニケーション)と言います。

  FCについては、「重度障害のある人がこんなことを書くなんておかしい」「援助者が書かせているに違いない」「いんちき」「コックリさんみたいなものだ」という批判が長らく浴びせられてきました。確かに、中には、不確かなものもあったようです。

  しかし、日本の各地で自然発生的に、あるいは、セミナーなどを通じてFCを使える人(FCユーザー)は、着々と生まれていました。

 千葉県に住む東田直樹くんが、手を添えてもらうFCから、文字盤を指差す方法、そして、自力でパソコンを打って表現するという方法を手に入れて、「自閉症というぼくの世界」「この地球に生まれたぼくの仲間たちへ」「自閉症のぼくが飛び跳ねる理由」(いずれもエスコアール出版部)などの本を精力的に送りだしてくれるようになって、一挙にFCへの理解が広がってきたように思います。

  ご紹介するこの本は、筆談援助という考え方の解説であり、自分の本当の気持ちをどんどん伝え始めた子どもたち(大きい人もいますが)の実例がたくさん紹介されています。

 筆談で自分の気持ちが伝えられるようになる前のことを思い出して、こんなふうに書いた子がいます。

≪じぶんの こころが つらくて おかあさんに  きいてほしいと おもっても つたえるほうほうがなくて なくことや おこることしか できなくて くるしかった ぼくがくるしいと おかあさんも くるしくなって そんなきもちばかりが ふくらんでいたね≫

また、≪たすけてください ぼく みんなと おんなじように なりたい≫ ≪おかあさん ぼくを みんなとおなじに してください≫と書く子も少なくないと言います。

   FCユーザー本人も「なぜ、こういうことができるのかわからない」というくらいですから、科学的解明はこれからの課題です。

 けれども、もしも、「ほんとうは言いたいことがいっぱいある」のに「うまく表現する手段が与えられていない」状態なのだとしたら、 何とかして、その表現の手段を保障しようと考えるのは当たり前のことだと思います。

  STはなかなか取り組んでこなかったFCですが、私は重度障害と言われる人たちのコミュニケーション保障の一つの可能性を開くものとして、FCに大いに興味を持っていますし、トライしてみようと思っています。

  トライしてみる人が増えること、そこまで行かないにしても、「もしかしたら、この子もたくさんいいたいことがあるのかもしれない」という目で、障害のある子どもたちを見てくれる人たちが増えることを期待しています。

  片言程度のことばしかなく、それも、エコラリア(オウム返し)が多く、部屋を意味もなく走り回り、「ウィーーー!」って言いながら、手をたたき、ぴょんぴょん跳ねる自閉症の人を見れば、多くの人は「重い知的障害を伴う自閉症の人だな」って思うでしょう。

  でも、見た目そういう風にしか見えない自閉症の人たちが「周りの人たちが話していることは、一般の人と同じように聞こえ、理解しています。でも、自分でことばを言うことが、どうしてもできない」のだとしたら?

  そういう人たちに発信の手段を保障しようと行われてきたのがFC(ファシリテーテッド・コミュニケーション)や筆談です。

  昨年11月16日にダグラス・ビクレンと東田直樹ジョイント講演会が開かれました。援助者が手を支えて書く、一般的なスタイルの「筆談」ではなく、直樹くんがその場での質問にこたえてパソコンを打ち込んでゆくさまが映しだされ、参加した人たちに大きな印象を残しました。
(11月16日の講演会の様子はhttp://escor.co.jp/gr/dn-forum/に)

  今年5月に、ダグラスが再来日し、東田君を含むメンバーによるシンポジウムが企画されています。私(中川)も、シンポジストの一人として登壇します。

   「不思議」としか言えないけれど、でも、確かにそこに実在するらしいFC(ファシリテーテッドコミュニケーション)を解明し、もっと多くの人たちにチャレンジしてもらいたいものだと願っています。

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公開シンポジウム   【自閉症者の語る 自閉症の世界
 

主催:東京大学大学院教育学研究科 臨床心理学コース
共催:東京大学大学院教育学研究科附属 
        バリアフリー教育開発研究センター(予定)

日時    2009年5月23日(月) 1時半ー5時

会場    東京大学鉄門講堂

定員    250名

参加費  500円

登壇者  東田直樹          高校生作家  
       ラリービショネット     画家
       トレイシー・スレッシャー  セルフアドボケイト
       ダグラス・ビクレン     シラキュース大学
       中川信子          言語聴覚士
       能智正博   東京大学大学院教育学研究科
                   臨床心理学コース准教授
       下山晴彦   東京大学大学院教育学研究科
                    臨床心理学コース教授

詳細・申し込みは    http://katari.umin.jp/  をご参照ください。

筆談援助・FCについては、「言えない気持ちを伝えたい」(筆談援助の会 エスコアール出版) が出版されています。  
               

  リンクで紹介してある、青森県総合学校教育センターの特別支援教育課のぺージを私は時々訪問します。情報量の速さと確かさには圧倒されます。
http://www.edu-c.pref.aomori.jp/tokushi/

   私はここ数年、青森のセンターに続けてお招きいただいていますが、ここの方たちの「こころざし」に触れるたびに 「よっしゃ!」と自分にも言い聞かせます。

「リンクしてあります」だけではもったいないので、トップページの全文(青森県総合学校教育センター 特別支援教育課長 風晴冨貴さんによる)を貼り付けておきます。

http://www.edu-c.pref.aomori.jp/tokushi/kayori.html

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特別支援教育は、『教育』の片隅にわずか数%存在する「日陰の教育」ではない。

特別支援教育は『教育』の基礎・基盤となる部分に位置づけられるべき教育である。

『教育』の基底の部分に特別支援教育というブルーの部分があるとすると、それが徐々に色を薄めて、〝限りなく透明に近いブルー〟となるまで上へ広がっていく。

 

 特別支援教育の対象となる子どもかどうかの線引きはできないし、境界線も存在しない。

障害のあるなしにかかわらず誰でもが程度の差こそあれ個別の教育的ニーズを持っている。

それに対して支援していくのが〝特別支援教育〟つまり〝誰もが必要に応じて受けられる教育〟である。

 

 「この世の中に支援を必要としない子どもは一人もいない。

  子どもというのは支援を必要とすることを前提とした存在である。

   だからこそ〝子ども〟なのである。」 

 

特別支援は、『特別な子』のための『特別な扱い』ではない。

特別支援は、『一人一人違ったニーズを持つすべての子』のための『個別の配慮』のことである。

『一人がみんなのために、みんなが一人のために』のスローガンこそ、特別支援教育の精神である。

つまり、「一人の(教師)が(子ども)みんなのために、(教師)みんなが一人の(子ども)のために」力を出し合い協働で進める教育である。

特別支援教育においては、いわゆる「学級王国」は存在しえない。

 

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通常学級の担任(担当)の先生に以下の三点について、もう一度見直しをお願いします。

(1)画一的な子どもの見方を

   子どもとはこういうものだという思いこみや子どもはみんなこうあるべきだという一律の考え 

(2)旧態然とした授業を

   子どもを自分の教え方に従わせようとするばかりで、子どもに合わせて自分の教え方を変えようとしない指導方法

(3)教師集団のあり方を

   あの先生にはあの先生のやり方があるので、という縄張り意識

    ・学校、学年全体の足並みを乱さないで、というしばり

 

校長(教頭)先生にお願いがあります。

 

(1)特別支援教育は学校の共通課題として、自校のすべての子どもを対象に全教職員が取り組んでいくという明確な認識を示して、特別支援教育に対する教職員及び保護者の意識改革を図っていただきたい。

(2)  特別支援教育は、校長(教頭)先生のリーダーとしての存在が重要となるので、教職員を支援するとともに、『学び』のリーダーシップを発揮していただきたい 

 

(3)   特別支援教育に関わり、不安を抱えて相談にきたり、協力や支援を要請したりする担任や特別支援教育コーディネーターを、「能力がない」、「要求が多すぎる」、「自力で課題解決ができない」などのマイナス評価をしないでいただきたい。

 

  特別支援教育という名称で、私たち教師は、どのような意識改革を図る必要があるのか。

 私たち教師は、子どもの何を支援しようとしているのか、そしてそれは、何のために行っているのか、教師一人一人が問い直しを求められているのだと思います。

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 3月7日(土)午後、(社団)全国保健センター連合会と ファイザー製薬の共催による「第9回 学校保健・保健活動セミナー」が行われました。

 新宿にあるファイザー製薬本社会議室での講義の模様が、全国63会場(ファイザー製薬の会議室等)にWeb配信される、という方法でのセミナーで、全国での参加者合計は1520人だったそうです。

  講義は「成長障害」に関するドクターのものと、私、中川のことばの発達に関するものとの二本立てでした。

 全国の「こどもの発達支援を考えるSTの会」のお仲間たちや、知り合いの保護者の方たちで、各会場に出向いてくださったかたも多く、終わってから感想などのメールをいただきました。

  研修のために東京や大阪までわざわざ出かけることが難しい非常勤専門職や、子育て真っ最中の親ごさんたちが、気軽な形で情報を手に入れる方法がもっと普及するといいな、と思いました。

  ちなみに、独立行政法人「特別支援教育総合研究所」のサイトに併設されている「発達障害教育情報センター」の中の「研修講義」の中には、発達障害にかかわる、コンパクトで分かりやすい講義が動画でおさめられています。
  参考になさってください。

  今日(3月8日 日曜日)は、「第6回 関東子ども精神保健学会」の、子ども虐待をめぐるシンポジウムに参加してきました。充実の内容でした。

  学会長でもある、淑徳大学の松田博雄先生がお書きになった「子ども虐待  多職種専門家チームによる取り組み」の本の紹介を「本の紹介」欄に載せておきました。

  杉山登志郎先生が「子ども虐待という第四の発達障害」(学研)で提起されたように、虐待環境が引き起こす行動特徴と、発達障害の行動特徴とは酷似しています。
  また、発達障害のある子ども、あるいは、その可能性のある子どもは、総じて養育者にとっての「育てにくさ」、先生にとっての「扱いにくさ」を持ち合わせており、親や先生からの不適切な扱いを引き出しやすいという事実もあります。
  発達障害にかかわる支援者、専門家と名乗る人たちはすべからく、虐待について知っておかなければならない、と、再確認すると同時に、子どもの健やかな育ちを守るために、周囲にいる大人たちがネットワークを組み、「みんなで親子を支える」ことの大切さも、あらためて感じました。

  おりしも、日本における虐待予防の活動に先駆的に取り組み、「社会福祉法人 子どもの虐待防止センター」の理事長であった坂井聖二先生が、3月2日に59歳の若さで亡くなりました。小児科医として、子どもの命と権利を守るために先頭に立って奮闘された坂井先生の「こころざし」を、幾分かでも、私たちは受け継いでいかなければならない、と思います。

  ちなみに、日本語の「虐待」は、もっぱら子どもに手を上げるという、身体的な虐待をイメージさせますが、英語のchild  abuse  あるいは、 mal   treatment  はもっと広いニュアンスを持っています。たとえばdrug  abuseは薬物依存、薬物濫用のことですし、mal  treatmentは、「mal=よくない  treatment=扱い」、すなわち、不適切な扱い、不適切な養育という意味合いです。
  子どもの意志に関係なくお受験に駆り立てたり、一週間びっちりおけいこごとでスケジュールを埋めたりするのも、立派な「mal  treatment」なのではないか、と、疲れ切った表情の子どもたちを見ていて、思います。


  松田博雄先生は小児神経のお医者さんです。私は、調布市の健診後フォローのチームの一員に、松田先生がいてくださることの恩恵をたくさんこうむってきました。

 先生は、子どもの虐待防止に精力的に取り組み、三鷹市のネットワーク構築に大きな貢献をされただけでなく、虐待防止のために医療にできること、医療がしなくてはならないこと、をさまざまな場で訴え続けておられます。

  発達障害のある子ども、発達障害かもしれない子の多くは「育てにくい子」であり、保護者や周囲の大人からの虐待(不適切な扱い)を誘発しがちです。
  逆に、虐待(不適切な養育)を受けてきた子どもは、発達障害と同様の行動、症状を見せるようになることが少なくありません。「虐待という第四の発達障害」(杉山登志郎先生による)といわれるゆえんです。
  発達障害にかかわる支援者、専門職は、虐待についてよく理解しておく必要があります。保護者支援のためにも、です。

  松田先生の本が2008年3月に出版されました。

「子ども虐待  多職種専門家チームによる取り組み」(松田博雄  学文社)

  虐待から子どもとその親を助け出す第一線で仕事をしてきた方ならではの本で、現場の支援者が知っておくべき知識の、ほとんどが網羅されていると思います。
  税込み4200円と値段は張りますが、目次を辞書的に使って、必要なところだけを読む、という使い方ができて便利です。

   目次を次に貼り付けておきます。
  

はじめに

第1章 虐待とはなにか
 1 子ども虐待
 2 児童虐待防止等に関する法律による定義
 3 古くて新しいこと
 4 ファミリーバイオレンス
 5 子ども虐待は小児の重大な疾患である
 6 不適切なことば「虐待」
 7 子どもの立場で
 8 子ども虐待は,子どもの権利侵害である
 9 親子心中・無理心中・一家心中
 10 子育て困難の最重症型が子ども虐待である
 11 愛着形成が障害されること
 12 たかが50年,されど20年
 13 虐待をする,特別な人がいるわけではない
 14 虐待をする,特別な人がいる
 15 ドメスティックバイオレンス(DV)の現場にいること,見ること
 16 「虐待」と認識することで,さまざまな支援につなげることができる
 17 虐待する親を罰するのではない,虐待する親も支援を必要としている
 18 構造的虐待・専門職による虐待
 19 日本の文化に根ざした対策の構築を

第2章 子ども虐待は放置してはいけない・子ども虐待の予後は悪い
 1 脳の発達と発達の臨界期
 2 子どもの命に関わることがある
 3 幼児期・愛着障害と第四の発達障害
 4 学童期・さまざまな問題行動と非行
 5 思春期,青年期
 6 世代間伝播
 7 虐待体験は,脳に不可逆的な病変を残す
 8 すくすくコホート研究

第3章 一般的な処遇・対応
 1 医療モデルと情報の取得
 2 発 見
 3 通 告
 4 処遇の検討・決定
 5 安全の確保
 6 在宅指導―再統合と地域での追跡と見守り
 7 予 防

第4章 子ども虐待の4類型と見極めのポイント
 1 身体的虐待
 2 性的虐待
 3 ネグレクト
 4 心理的・情緒的虐待
 5 傷の見方
 6 性的虐待の診察法

第5章 虐待の類型
 1 揺さぶられ症候群(SBS)
 2 代理によるミュンハウゼン症候群(MSBP)
 3 医療ネグレクト
 4 事故によらない薬物中毒
 5 非器質性発育障害(NOFTT)
 6 障害児と虐待
 7 ドメスティックバイオレンス(DV)と子ども虐待

第6章 周産期と子ども虐待
 1 極低出生体重児は発達障害,被虐待のハイリスク児である
 2 胎児への虐待
 3 胎児と環境
 4 新生児遺棄・新生児殺
 5 人工妊娠中絶
 6 生殖医療・不妊治療と虐待

第7章 医療機関と子ども虐待
 1 医療機関で子ども虐待に取り組む理由
 2 子ども虐待に病院職員は取り組まなければならない
   ―杏林大学病院の理念を基に―
 3 地域の中核病院の子ども虐待対応チーム
 4 クリニック・市中病院での対応
 5 医師・医療機関が虐待対応に躊躇する理由
 6 医療機関の中のソーシャルワーカー(MSW)の役割
 7 診断するということ
 8 意見書・診断書の書き方
 9 病院連携・病診連携
 10 緊急時への対応
 11 子ども虐待と医療費

第8章 亡くなった子どもから学ぶ・剖検とdeath review
 1 心肺停止状態で搬送され,死亡した事例
 2 死亡例に対する対応
 3 厚生労働省の死亡例検討
 4 剖検制度・監察医制度がある地域はごく一部
 5 臨床法医学
 6 子どもの死亡例の検討
 7 臓器移植と子ども虐待

第9章 予防に勝るものはない
 1 虐待発症のメカニズムと虐待の予防
 2 保健機関の役割・スクリーニング
 3 さまざまな育児支援策
 4 さまざまな保健施策,子育て支援策
 5 妊娠期からの虐待ハイリスク家族への支援
 6 妊娠・出産が変わってきている
 7 母乳が見直されてきている
 8 新生児訪問とこんにちは赤ちゃん事業
 9 ノーバディーズパーフェクト
 10 デベロップメンタルケア
 11 エジンバラ産後うつ病質問票
 12 乳幼児健診
 13 中高生のふれあい体験
 14 性教育と虐待
 15 チャイルドライン
 16 電話相談
 17 オレンジリボンと児童虐待防止推進月間
 18 子育ち支援
 19 safe community(WHO)

第10章 要保護児童対策地域協議会と地域ネットワーク
 1 要保護対策地域協議会
 2 ネットワーク構築には歴史がある・東京三鷹市の紹介
 3 ネットワークの適切な機能
 4 それぞれの機関・組織内の連携
 5 「見守り」という曖昧なことば

第11章 構造的虐待・支援者が気をつけること
 1 専門職による虐待
 2 援助者の精神保健,元気でなければ対応はできない
 3 一緒にやりましょう

以上です。

なお、とてもコンパクトに知りたい方には、「月刊 地域保健」2008年11月号特集「発達障害 up  to  date」の記事の中にも、松田先生の文が載せられていました。

 親だけで子どもを育てることが、どんどん難しくなっています。「子育て支援」ということばができて活動が広がって20年ほど経ったそうです。子育て支援の場所は増えたけれど、その質はどうなの?と考えた現場スタッフや研究者が「子育てひろば」のスタッフ向けに「本当の支援」になるようなポイントをあげて、わかりやすいイラストで説明したのがこの本です。

    「つながる 育てる 子育て支援   具体的な技術・態度を身につける32のリスト」  子育て支援者コンピテンシー研究会 編著  チャイルド本社http://www.childbook.co.jp/book/osu.html

  「コンピテンシー」って聞きなれませんが、「ある分野で成果をきちんとあげられる人たちに共通の知識・技術・態度」のことだそうです。   この本はほんとうに役に立つ子育て支援をするために、支援者がわきまえるべきことの内容を

 ○環境を設定する   
 ○関係をつくる
 ○課題を知る
 ○支援する
 ○振り返る、学ぶ

の5つに分けて、全部で32のポイントについて、解説しています。

 子育て支援に限らず、さまざまな分野で「支援者」と言われる人たちが心得ておくべき基礎が述べられています。読み進みながら、「そうそう、こういう支援者だったら、どんなにかうれしいわ」と思えるような実例がたくさん出てきます。
   子どもの発達の道筋についても触れられているので、親が読んでもためになりそうです。
  読みながら、なんだかとてもうれしい気持ちになりました。「子どもを大切にする」「その親も大切にする」というハートが底に流れているからかもしれません。

 

難聴児支援の本のご紹介です。 (なお、文章は、愛知県立豊橋聾学校の村松弘子先生の紹介文を大幅に引用しています)

補聴器、人工内耳など何らかの聴覚補償のニーズを持つ子どもの出現率は1000人について2-3人程度と言われており、発達障害に比すれば少ないにせよ、全国では相当数にのぼります。 その大部分の子ども達が、全国の小中学校で聞こえる子どもと一緒に学校生活を送っています。

元新潟県立長岡聾学校の白井一夫先生はじめお三人が以前出された「難聴児・生徒理解ハンドブック」が「 コミュニケーションが変わる・笑顔が生まれる」というキャッチコピーで学苑社から出版されました。

難聴は見えにくい障害といわれますが、難聴の子どもが抱える様々な問題の中から最重要なものを、30の項目といくつかのトピックでわかりやすく簡潔に説明する構成を取っています。
「小学校英語」や「人工内耳」などの今日的な課題を加えての出版です。

      以下のHPで詳しい内容を確認できます。
難聴の思春期を考えるページ 
http://www17.ocn.ne.jp/~nanchohb/

また、学苑社HPで詳細な目次とQ&Aの項目ガイダンスが見られます。
     http://www.gakuensha.co.jp/cn27/pg318.html


 以前のハンドブックは口コミでの販売でした。
難聴児への支援についてきちんと書かれた本が書店に並ぶということは、支援する側にとっても、おそらく本人にとっても助かることだ、と思います。 

 

 

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